満足度★★★★
鑑賞日2018/11/08 (木) 19:00
座席1階
原田マハの小説を舞台化。戦後間もない沖縄で、当地の若き芸術家たちと占領軍の米兵との交流を描く。
老舗文化座のイメージとは違い、舞台はとにかく明るいムードで進んでいく。賄いのおばちゃん役を務めた佐々木愛の寒いおやじギャグは台本通りなのだろうが、凄惨な沖縄戦のにおいはしない。それは、戦争が終わって若者たちが自由に芸術ができるという喜びだ。
その一方で、やはり血の海に沈んだ沖縄と占領軍という、交流というにはきわめて釣り合わない現実も合間に顔を出す。占領兵にしてみれば、単なる母国へのおみやげなのかもしれないが、沖縄の若者たちは生きるために絵筆を取るのである。
舞台はテンポ良く進む。佐々木愛の演技はさすがだ。実年齢よりかなり若く見えたので、最初、この賄いのおばさんが佐々木愛だとは気付かなかったくらいだ。一方で芸術を演じた若者たちのはつらつとした動きが印象に残る。
パンフレットに劇団温泉ドラゴンのシライケイタが一文を寄せている。こっちも文化座との取り合わせでいくと、かなり異質な感じがして注目してしまう。それを分かっていてかシライは大まじめに「もはや、新劇とそれ以外という区別があるべきではない」と語っていて、幕間の時間を大いに盛り上げてくれている。