トミイのスカートからミシンがとびだした話 公演情報 新国立劇場演劇研修所「トミイのスカートからミシンがとびだした話」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/10/31 (水) 14:00

    座席1階C1列16番

    千秋楽の完成形を観たということで、割と評価しやすいかな、と。

    まず、67年も上演されていない戯曲をよく持ってきたなあ、というのが最初の感想。
    三次十郎作品の上演も、「炎の人」や「廃墟」を除くとあまりお目にかかれない。
    この作品も、初めて聞く題名だし、調べても出てこない。
    パンフレットには、若い役者たちの想像力、役を作り上げる力を試す、みたいなことが書かれていたのだけれど、まあ大変だったろう。
    パンパンだ、コカインだと言っても、イメージできないだろうし。
    映画で「肉体の門」や「赤線地帯」でも観て、少しはその時代の空気を感じたのだろうか。

    さて、題名がキッチュでかわいいので、研究生観たさもあり観劇。
    ただし、前半の富子が娼婦を辞めて、貯めたお金で買ったミシンをもって故郷に帰る件は、ただただ退屈。結局、社会更生の美談として雑誌に取り上げられたことから、元パンパンであることが親族に判ってしまい、錦を飾ったはずが、街の人間達だけでなく、親族からも疎ましく思われていく。
    元娼婦と判ると、それまで自慢の姪だとしていた叔父が関係を迫ったり、妹は叔父と姉の関係を知って精神状態が不安定に、弟はぐれてしまう。

    「カルメン故郷に帰る」のようなからっとしたユーモアもなく、啖呵を切って開き直りきるでもなく、三好十郎特有のジメジメした(鬱鬱とした?)苦笑いを催す場面が続く。主演富子を演じる永井茉梨奈も、懸命に明るくバイタリティある女を演じるのだけれど、いかんせん彼女を取り巻く男のほとんどがクズで救いがなく、物語り上で空回りせざる負えない。

    何となく悶々と芝居が続き後半に入ると、職を転々とする富子の境遇と、かつての娼婦仲間との交流が描かれる。このあたり「嫌われ松子の一生」のような錯覚を覚える。

    富子が働く見世物小屋(「衛生博覧会」!)のような、ちょっとした見物はあるけれど、結局は娼婦としての不遇を見せられ、それでも明るく生きています!的な病院での展開はちょっと辟易。しかし、、、、

    ネタバレBOX

    きょうちゃんこと、富子たちと昔の仲間が病院に訪ねてくるところから、俄然、物語りは高揚感を覚える。きょうちゃんを演じる石原嵩志の独り舞台である。彼は地元を締めているヤクザの組長を刺殺して逃亡中。病院で富子他と出会い、これから自首すると言う。そのセリフ1つ1つが、抜群に粒だって素晴らしい。彼は正義のためでも、誰かのためでもない殺人の動機を語るのだけれど、このあたりは流石にカミュの不条理劇。
    抜群の説得力(合理的ではなく)を持って、観客に迫ってくる。
    このあたりだけで、少し疲れを覚えていた私も、一気に舞台に没頭してしまい、次第に目頭がウルウルに。
    場面転換直前のギター壊しには、驚いた。おまえはジミヘンか。
    でも、千秋楽だから壊したのかな、毎日やっていたのかあ、知りたいところ。

    最後は、きょうちゃんの意見を聞き入れて、求愛してきた男と結ばれ、また実家から取り戻したミシンでの裁縫を差異化するという他愛もない話。

    パンフでは、三好十郎も何も起きない話的な事を生前語っていたというからそんなものかと。今回の★の半分は石原さんの演技に対して。
    これからに大きな期待をしています。

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    2018/11/02 12:18

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