満足度★★★★
鴻上尚史さんの最新作音楽劇「ローリング・ソング」を見ました。20代の中山優馬君、森田涼花ちゃん、
40代の松岡充さん、60代の中村雅俊さん、久野綾希子さん演じるそれぞれの登場人物の
夢・理想と現実とのギャップに葛藤しながら、それぞれの人生で前を向いて進んでいくストーリー。
鴻上さんといえば時事問題をこれでもかとぶっこんでくる作風だと思うんですが、今作は
それを最小限に止め、夢と現実、家族と他人、お金と愛情といった普遍的なテーマに重きを
置いた作品だと感じました。そのせいか、鴻上さんの作品の多くに見られる、比喩的な意味が
込められた日常に入ってくる超常的な出来事が、今作では全く描かれず、現実的な
話に終始してました。それらの狭間で激しく揺れ動く登場人物たちの葛藤や
心の変化を丁寧に描いていて好感が持てました。それらがあったからこそ、最後の
シーンを見終わった後で爽快感や勇気を感じられたのだと思います。
役者の皆さんがちゃんと歌をやっている人たちだったので、歌の部分も十分聴き応えが
あったし、登場人物のその場その場の心情に凄くマッチした曲ばかりだったので、
音楽劇としてもとても楽しめました。
劇中、会社云々という現実的な話が出てきて、やたら詳しいなあと感じたのは
鴻上さん自身が経営者でもあるからなのかなあと考えたりしました。やはり
お客さんは若い女性の人が多かったですが、普遍的なテーマが重視されているので
男性でも、若くなくても楽しめる作品だと思いました。