タイムマシンじゃ救えない 公演情報 ダブルエッジ「タイムマシンじゃ救えない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2018/07/07 (土)

    7日ソワレ(75分)を拝見。

    ネタバレBOX

    少年の頃、偶然見つけた「時空を越えた穴」に、オトナになった今も憑りつかれ、家庭を顧みずタイムマシーンの開発に没頭する、科学者の中年男(演・田辺日太さん)。
    しかし、研究は思うように進まず、資金提供先への成果発表会の日も間近に迫り、半ばヤケクソ気味。

    そんな科学者の窮地をまるで見越したかのように、研究所の床に勝手に掘られた穴から突然現れた、若い女性の押しかけ助手(演・梢栄さん)。
    彼女は、科学者の制止を振り切って、モニターに指示を入力し、手慣れた動作で回線をつなぎ変える。すると、今までウンともスンともいわなかったタイムマシーンが動き出し…

    序盤は、ずぼらな科学者と、しっかり者の助手、この2人の、まるで父娘のような、ほのぼのとしたやり取りが続きます。
    しかし、助手のあまりの手際の良さに、彼女は未来からの訪問者なんだと、科学者が気づいたあたりからストーリーが急変します。

    このコは「正解」を既に知っているんだ♪
    助手にタイムマシーンの開発の全てを委ねて、自らは何も手を出さなくなった科学者。
    この無責任な態度に助手がブチ切れる。慌てて和解を求めようとする科学者に、ナイフを突き立てて近寄らせないほど激昂しながら、こう言い放つ。
    幼い頃のワタシをウチの中に独りぼっちにしてまでして取り組んでいた、アナタのタイムマシーンへの情熱は、こんな程度のものだったの!
    家庭を顧みず、呆れ果てた妻が去った後もなお、タイムマシーンの開発に没頭する父親に、ネグレクト(養育放棄)されたまま育った、実の娘の、魂からの叫びだった。

    「実の娘」役の梢栄さん。
    話の流れから、観客には容易に正体が察せられたのですが、「父親を案じて、未来から手助けにやってきた孝行娘」のイメージを客席に植え付けた頃合いでの、ナイフかざしての大どんでん返し。
    「押しかけ助手」を装っていたときからの、利発で快活な表情での立ち振るは、このどんでん返しをより効果的なものにさせました。
    科学者がいないときを見計らって、時折、彼女が口ずさむ『アンパンマン』に『ドラえもん』の主題歌。実は、幼い頃、誰もいない家の中で、孤独に苛まれた気持ちを奮い立たせるために唄っていた哀しいメロディだとわかると、 このどんでん返しがより劇的なものになりました。

    俺は何も悪くない! 俺のせいじゃないんだ!
    はるばる未来からやって来てまでして、娘が見出したかった、尊敬すべき父親の姿。そんな淡い期待さえ、結果的に踏みにじっておきながら、自らにグジグジ言い訳するばかりの、田辺日太さん演じる、冴えない中年男の科学者。
    客観的にみれば、社会人としても・家庭人としても、どうしようもないダメ男です。
    しかし…しかしなんですが、人生のかなりの行程まで通過してきた、もうやり直しが容易ではない私のような年代の人間には、そんなダメ男のことを、一概に、情けないと吐き棄てることができませんでした。
    決して、人生の良い見本ではない、科学者氏へのシンパシーが、半端なかった75分でした。

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    2018/07/08 05:02

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