満足度★★★★★
通常の病院よりも明るめの内装や、その調度品に至るまで私の認識しているものと寸分の違いもない終末期医療病棟が舞台上にありました。
その病棟で生活を送るのは様々な症状を抱えた認知症患者。
舞台を降りれば皆さんしっかりお元気な役者さん達なのでしょうが、それは最前列で観てもイメージに歩み寄る努力は全く必要のない年老いた認知症患者さんでした。
前半は病棟での何気ない日常が、看護師さんには本当に目まぐるしく、患者さんにはゆったりとした日々がとても丁寧に描かれており、ごく自然な可笑し味と「老い」が突き付ける各々の哀愁がしっかり感じ取られます。
休憩を挟んだ後半はドラマが大きく回りだし緊張感が生まれる中、認知症と終末のあり方について、もうとことん考えさせられました。
突き刺さる様な台詞のひとつひとつを噛みしめながら帰路につき、そのまま本作の内容を家族に報告して話し合ったりしました。
「老後」や「認知症」についてはラビット番長・光希・ハグハグ共和国さんも作品で扱われていますが、どの劇団さんも真摯にテーマと向き合われており、毎回考えさせられます。
認知症には将来なるかもしれないし、ならないかもしれない。
青年座さんの本作もしっかりした演技・演出で、とても長編小説の舞台化とは思えないほどの自然な流れと、舞台ならではの圧倒さでこちらに問いかけてきます。