満足度★★★★
イギリスの現代劇作家の作品では頻繁に紹介されるマクドナーの新作。この作家の作品は土着的な味わいがあって馴染みやすいのか、何本も紹介されている。今回も、田舎のしけたパブを舞台にした近過去物。イギリスで絞首刑が廃止されたのは70年代のようで、そこからはまだ50年しかたっていない。この絞首刑執行人だった男が、死刑廃止後もその仕事に誇りを持ち、その結果・・と言うなかなか厳しい指摘が土俗性が残る村落的社会の中で展開する。一幕は、やや説明的だが、二幕になると俄然、サスペンス仕立ての誘拐劇、殺人劇が、外では嵐の雷鳴の中で展開する。社会的なテーマのある現代劇なのだが、ウエストエンドでも観客が集められる面白い犯罪劇になっている。
長塚圭史の演出的確。田中哲司、羽場祐一、ともにいつのまにかにか世田パブの舞台負けしない力をつけている。小劇場出身の市川、谷川、村上の庶民三人組はもう商業演劇で鍛えられた大劇場脇役に劣らないほどうまくなった。秋山奈津子、この人はホントに隙がない。芝居が終わると、カーテンコールで中央にいながらさっさと引き上げる役者らしい熱の醒め方がいい。
ところで、今世田パブでは下のトラムで「バリーターク」をやっている。現代イギリス作品で、これも見てみたいのだが、チケットが全く手に入らない。芝居好きにきくと皆お手上げである。つまり出演者のミーハーファンが手をまわしてチケットを買い占めて、連日ファンクラブの総会のようなことになっているよし。全公演を見たと自慢するような、芝居の何たるかを全く分からない観客に劇場を占拠されるのは本当に困ったものだ。タレントのためにもならない。いっそ、武道館ででもやったらどうだと憎まれ口をたたきたくなる。