火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」 公演情報 オフィス上の空「火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    何者でもない自分が社会でどう生きるのか。自らの手・足で自分の居場所を模索し築き上げようと悩みもがく姿…その心の叫び”命の燃やし方は自由だ”が痛々しく描かれたテアトルノワール。人間心理の不可解さが劇として見事に具現化された秀作。
    (上演時間2時間20分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、石角柱のようなものが立ち並び殺伐感が漂う。場面に応じて、上手側に主人公:佐伯真理子(福永マリカサン)の家、下手側には彼女のバイト先を出現させる。

    梗概₋2020年、東京五輪の目前の都内でテロ爆破事件が起きる。犯行に及んだのは【焔の命】という劇団員達である。何故そのような行為をしたのか、物語は事件から2年後に1人のフリーライターが劇団員の真理子に面会・取材した回想録として展開していく。テロ行為に至る事実が淡々と語られると同時に、真理子自身の心中は別次元で語られていたようだ。また佐伯家という加害者家族の立場、特に母と妹の苦悩と苛立ちが描かれる。いくつかの視点から切り出した場面は、一様に居場所が見つけられない不安定な様子がうかがえる。

    真理子は自分が何者なのか、何者にもなっていない焦燥。母親からは”普通”を強要され反発する姿。居場所は所属する劇団、そこでの活動に生き甲斐を見出している。劇団の公演に向けての合宿、少人数による共同生活は段々と異常な環境下に包まれる。合宿中に演出家の森洋平(辻響平サン)の独特な理論展開に陶酔・高揚するようになり、いつの間にか激しい感情が押し寄せる。それが狂気な行動へ駆り立てるが抗うことが出来ない雰囲気。合宿-共同生活における自己主張の難しさが伝わる。
    時代や状況が生きる方向性を決定付けていた時、劇中では終戦間際の特攻隊員の死生観、学生運動、イデオロギーという台詞に象徴される。今は自分で考え見つけなければならないという自由という不安、自己決定という心の負担が見えてくる。一方親の立場…公演では母親が娘・真理子との接し方、育て方が間違っていたのか、これからどう向き合えばいいのか苦悩と諦念の姿が切ない。

    この狂気な行動は、映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(若松孝二監督)を連想する。内容は反権力的な学生運動が盛り上がっていた頃の話。彼らは何に突き動かされ、どのような経過でリンチ(粛清)事件やあさま山荘事件に至ったのかというもの。
    ちなみに、本公演の登場人物(名字)は、森・永田・坂口・重信などで連合赤軍メンバーを意識したような。
    公演は社会派のように観えるが、27歳の女性が自分自身に向き合い、必死に生きる途を模索している。人間の理屈では説明出来ない不可解な思考と行動に焦点を当てているような...。社会や状況に向けた批判は、合宿中の森の説明台詞そのもので真の社会性は観て取れない。社会性というよりは家族の在り方、個人の生き方を問うような感じを受ける。

    舞台技術、諧調させた照明、効果的な音響など観せる工夫が素晴らしい。それらはセットの殺伐とした雰囲気にマッチしており物語に深みをもたらしている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/05/13 10:49

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