フォトグラフ51	公演情報 フォトグラフ51制作実行委員会「フォトグラフ51 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    科学者を主人公にするのは珍しくなくなったが、演劇と自然科学は文化としても対極にあるもので、現代劇の素材としても興味を引く。
    しかし、これは、1950年代の女性科学者が主人公で、研究内容も出てくるが科学の唯一真実性を信奉する科学者の人間ドラマである。2015年ロンドン初演の創作劇で、この公演は外国人の演出家を迎えての日本初演だ。最新の芝居を簡単に見に行くことが出来ないこの国のシアターゴーアーズにとってはありがたい企画だ。この舞台はロンドンの後はニューヨークでも上演されたようで、今の英米演劇の一端を知ることができる。
    ロンドンではニコールキッドマンが主人公を演じていろいろ賞も取っている。映画でおなじみの俳優だからその芝居ぶりが想像できる。男社会のイギリスのオックスブリッジの科学者社会のなかで、研究だけが生きがいの女性科学者のノーベル賞ものの発見が抹殺されてしまうというこの話が、今も芝居になるほど関心をもたれるのは、欧米の性差別もなかなか根が深いと思う。舞台は主演以外はすべて男性キャストで、イギリスの男社会で身を処していく男たちのいやらしさが短くフラッシュ的に重ねられる。最近の海外戯曲によくあるシーンよりも証言を重ねる形式である。
    その戯曲と、舞台の速度を重視した演出がこの公演の日本上演の成否を分けた。

    ネタバレBOX

    このホンの主題を性差別の話とすると、格別新しさはない。多分、欧米公演では主演者で客が来たのだと思う。キッドマンか、なるほどなぁ、と私も思う。またこの戯曲はイギリスお得意の風俗劇の要素が強く、これも多分だが、スピードのある男どものやり取りが受けたのだと思う。向こうの上演時間は95分、こちらはあれだけ俳優が舌を噛みそうになるほど頑張っても105分で、これでもドラマとしては長い(たるい)のである。俳優は科学用語を含んだ台詞を早くしゃべるが、順番が来たので、と言う感じになってしまう。欧米だと僅かな隙に観客の笑いがあって舞台が乗っていくのだろうが、日本では社会状況(風俗)が違う。この辺の計算が制作陣に足りなかった。翻訳もこの内容がよくわかるだけでもご苦労さまだが、芝居の台詞としては堅い。日本語にこなしきれない内容でもあるのだが。
    俳優は台詞が手いっぱいで、役の面白さまでは出し切れていない。そこは海外戯曲の宿命のようなものだが、初演の制作者はまずそこを考えるべきだろう。何しろ、この公演は失礼ながらこのキャストとセットで、東芸の地下で2時間足らず、それでも8500円である。今日の昼のように半分しか入らないのなら、6000円で満席になるようにしてほしい。芝居好きは海外新作は見たいのだが、この値段では足が引けてしまう。

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    2018/04/17 23:49

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