円盤 公演情報 BACK ATTACKERS「円盤」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    「グリーンフェスタ2018」参加作品。
    表層はコミカルであるが、内容は現代日本の社会問題、特に労働問題を鋭く批判するような物語である。いくつかのシーンを組み合わせた定型パターンの繰り返しは、既視化した感覚になり、意識が意識を飲み込むような錯覚に捉われる。いわゆるデジャ-ブュと呼ばれるもので、全体的な印象はブラック・コメディといったところである。
    (上演時間 2時間弱)

    ネタバレBOX

    セットは舞台奥、横一面に平板の衝立のようなものが後景として立てられている。その形は幾何学的なもので、そのまま観ていても何を表現(意味)しているか解らない。なお、平板に照射すると、その形状が廃墟=戦後のように映るよう印象付けしている。

    物語は、ヤマト(生命)保険会社の社員食堂もしくは休憩室であろうか、そこで食事をしている新人社員の会話から始まる。宇宙人は存在するか、そんな会話の中から宇宙人、UFO(円盤)は地球人の過去や現在と交信か介在する存在ではないか?
    場面は変わり、執務室を出現させ忙しく働く現場、取引先へのプレゼンテーション、またはクレーム対応などの日常風景が観える。突然に運動会シーンへ、さらに戦時中の戦闘シーンへ展開する。この社内・運動会・戦闘場面をワンセットとして繰り返す。企業戦士としての風景はプレゼン、ミスのフォロー、クレーム対応、パワハラ、セクハラそして長時間労働など、現在日本における企業風土の一端をデフォルメして描き出す。全体的な雰囲気はとにかく前に進めというもの。

    場面転換した戦闘シーンは戦時中に使用されたであろう三八銃を構え敵前に進む、それは死を意味している。企業”戦士”と戦争”戦死”は掛け合わせたようで、共通した意識は逃避できないもの。その場面を繫ぐため運動会シ-ンを挟み込む。勝つのはいつも赤組で、白組(降参)が勝つことはない。同じパターンの繰り返しは既視感を生む。この風景・状況は前にも観たという記憶が掘り起こされるが、パターンは同じでも内容が少しずつ変化することで意識が意識を飲み込むように上書きされて行く。その結果、物語の核心に導かれる。

    演出…奇妙な構成は、ごく普通の暮らしの中に深刻な内容を潜ませるが、それをビビッドな笑いで緩和させる。この深刻な問題を軽妙なタッチで描くギャップとユーモアが特長である。なお、場面ディテールには拘っておらず(乏しく)、それだけに伝えたい内容が鮮明・明確に表現できないと散漫だと思われる。
    特に目立った個性ある人物は描いていない。その意味では社会(会社)の体制・組織の問題を抉る群像劇といった感じ。演出と演技は少し中途半端な感じがして感情移入をすることが出来なかったのが残念だった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/04/13 21:31

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