生き返るなら早めに言って 公演情報 劇団鴻陵座「生き返るなら早めに言って」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    脚本は精緻さに欠け、演出は魅力不足、演技は荒削りで全体的には難が多いと思ったが、人が持つ曖昧さ、不確実性を如実に示す訴えに不気味な魅力を感じた。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    冒頭、登場人物の衣装は黒っぽく、セットでは白boxがいくつかあり鯨幕の様相である。床には切り紙が散乱しており心内荒涼といった演出であろうか。
    当日パンプで、脚本の根太一氏が「お話は あだち充原作の漫画『タッチ』の和也が終盤で生き返ったら…という発想から書きはじめました」とあり、冒頭のいくつかの台詞でそれとなく解る。

    物語は達樹の死後3年の後、彼の本を出版するため周囲の人たちに取材をするところから始まる。編集者は彼の”印象等が弱い所”を補うため、取材した人たちに美談的なことを無理やり聞きだそうとする。さらに編集者は、霊媒能力を持つという女性まで呼ぶが…。達樹が生き返ったが、本当に本人かという疑問が出てくる。それを試し、彼から当事者しか知らないことまで語られた。そのことから彼が本物であることが確認された。
    一方、周囲の人たちの証言は達樹を印象付けるための誇張、虚偽によって編集者が、嘘を真実と思い込み、逆に現れた人物は偽物だと判断する。そして生き返ったとすれば、事故の賠償金を返還する必要があるかもしれない。

    作劇は何をどう書くか、定義付けや決まり事という制約はあまりないと思うが、それを観客にどう観せるかということを考えれば、具体性というか納得性が大事ではなかろうか。人物の動き、会話、物事や情景の描写、回想や意識の変化など、それらの具体性の積み上げで何かを伝えることになる。本公演では、その具体性・納得性に欠ける。大きなところでは火葬や埋葬許可証が存在するにも関わらず、本人(身体)が生き返ること。所々の雑な情景描写(説明)が観客に受け入れられていないのでは…。

    それでも自分が感じ入るのは、編集者の取材に対し周りの嘘が本物(本人)を否定し、真実が歪められる怖ろしさに注目したからである。フェイクやデマに踊らされて真実を見誤る、もっと言えばインターネットの発達した現代、情報・表現の”多様化”が進んだように見える一方、誤った”情報構造の画一化”に繋がる怖れを思ったからである。そのためには、自分自身、リテラシーを見につける必要がある。本公演について言えば、”劇における茶番、奇跡などは人の勝手な解釈”と思い込む。
    それでも展開は、妄想やドッペルゲンガーなのか、それとも現実として描いたのか判然としない。もう少し観せ方(脚本も含め)に工夫が必要であろう。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/04/01 11:30

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