ライラック 公演情報 さよなら宇田川町「ライラック」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    手放しのHAPPYではないけど、何故か、観終って、少し、ふわわとした感情が残るホン。


    河西裕介さんのホンのイメージがキリキリと心が締め付けられる様な痛点があるのだが、今作は少し違った。


    人間が持つ「記憶」というワードで4組の物語が進む。




    忘れたい・忘れたくない・忘れなくてはいけない・忘れていいよ・・。
    私個人はもしも、自身に耐えられない悲しい出来事が起こったら、記憶を消してしまいたいと思う。
    悲しい記憶を持ちながら強く、生きる事が出来ないと思うから。
    でも、辛くてもヒトはその記憶を持ち続けなくてはいけないのかも。
    忘れちゃうと、その人の心から消えちゃうのは一番、悲しい事だけど、私は、ズルいかもしれないけど自分が辛かったら、忘れちゃいたい。


    でも、今作は「忘れない」「忘れられない」ヒトだった。

    ネタバレBOX

    4組の男女
    正確には3組と1組。


    ①妻が脳機能障がいによって、「忘れざるおえなくなった」夫婦。
    ②心療内科の医師とそこに通院する「患者」の男女・「意識的に忘れようとする」ことがもたらすことや、抱え込む事から他への心のよりどころを見出してしまった。
    ③男は記憶を蓄積する・想い出は残す。女は記憶をリセットする・想い出は消す。
    ④物語を紡ぐ男・傍にずっといる女。「忘れられない」二人。



    福沢浩介役(泉光典さん)を好きな中江果穂役(外村道子さん)が最終的に
    新しい恋人から自分の元に戻ってくるように策をこうじたんではないのかなと
    思えた、ラストの場面。
    あの心療内科での治療を受けたというのも、フェイクで
    実際は「忘れてない」女だったのかもしれない。


    医師である広瀬慎次役(山崎カズユキさん)は、ある種わかり易く追い詰められる
    ヒトであったので、そことの対比の浜崎優子役(るい乃あゆさん)の宗教と出逢ってからの変化が良かった。
    病院もそうだし、宗教もそうだし、「だれか」「なにか」にゆだねる事が
    一時、自分の苦しみを「忘れる」一番の方法であるのかもしれない。


    事故により、左側を認知できない・記憶の蓄積が出来ない
    自分の意図でなく「「忘れざるを 得ない」」妻:中江亜希子役(木村梨恵子さん)とその夫:中江隆雄役(竹内健史さん)。
    自分としては、このワードがきつかった。特に、最後、妊娠を告げる場面。


    自分がきちんと「お母さん」になる事が出来るのか。
    こんな足りてない自分で子供が可哀想ではないか。
    一緒にいる夫に対しても申し訳ない。
    自分は存在の意味があるのか。




    もしも、私が劇中の妻の立場であるなら
    どうしただろう。
    もしかすると、妊娠の事を伝えず、中絶などの選択をするのかもしれない。
    夫に告げずに。


    そして、物語を紡ぐ男と、傍にいる女。
    彼女は、もう、居ない。
    ただ、ただ、男の中には居る。
    ヒトはその人の事を忘れた時が
    本当に死ぬときという。


    だから、その女は死んでいない。
    男の「記憶」の中で生きている。
    その姿は、この物語を書いた作家の事かもしれないし、そうでないのかもしれない。


    観終って、「忘れない」って事、今一度考える。
    ライラックの花言葉で「想い出」というのがある。
    もしも、このホンを書いた人が居なくなっても、私は、覚えておきたいと思う。多分、私の方が先に死んじゃうとは思うけど。




    限られた観劇数なので、沢山観る事は難しいが、今作の様に作・演出から観に行った芝居で初見の俳優さんを知ることが出来るのも嬉しい。


    個人的に中江亜希子役木村梨恵子さんが素敵だった。


    もう一度、観たいなとおもう。劇中の様々なシチュエーションは、当事者になったらキツイものかもしれないけど、何故だか分からないけど、「傍にいる安心」というか、それだけで、幸せな感情って人間にはあるんだと思った。

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    2018/03/24 21:20

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  • ご指摘に関して返信遅くなり、申し訳ありませんでした。
    表記のご指摘ありがとうございました。
    修正致しました。

    2018/04/28 21:09

    内容でなく表記に関してで恐縮ですが
    「忘れざる 負えない」ではなく
    「忘れざるを 得ない」です。
    同様に誤っている方も少なくないですが、日本語は正しく使っていただきたく思います。

    2018/03/24 23:36

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