満足度★★★★
鑑賞日2018/03/02 (金)
作・演出 中津留章二さんです。
高知県土佐郡大川村のお話。
人口の減少と高齢化で議員確保が難しくなり、村民による直接民主制である町村総会を行おうかということで話題になり、新聞記者もやって来た。
村は林業と農業を営みにしていたが、1970年代に近隣の水不足のため村の大半がダムのそこに沈むことになった。
ダムを作れば、水の不足は補えるが、森林伐採により、大雨などで水質は落ちる・・・・村には損はあっても利益は無いのだ。
ダム建設の攻防の続く大川村とダム建設がなされた現在の大川村が、舞台の上にある。年月の流れが、大川村を大きく変えた。
この時間の流れに私も生きていた。
私の故郷は、立派な国道が作られ、高速道路も通り、新幹線も出来た・・・・その過程で故郷の景色は様変わりし、生活形態は大きく変わり、私の家族も変わった。小さないざこざを抱えながらも温かく、賑やかに過ごした子ども時代はもうなく、今は誰もいない家になってしまったのです。そのどうしようもない寂しさを、この舞台を観て思い出し、大川村で過ごす人たちをとても羨ましく思いました。帰ることに決めた明水にホッとし、彼女たちを受け入れる村人たちの温かさに胸が熱くなりました。
役者さんは、親と子の二役を演じます。
その切り替えが上手くて、さすが!です。
様々な葛藤、諍い、現実を受け入れることの覚悟・・・いろんな人々の思いが時代を作っていくことを思い、自分は今どこにいるんだろうかと思います。
新聞記者の存在が、ある意味現在を象徴的に見せていたと思います。彼の言ういわゆる正論、当事者に押し付けてくる正義のようなもの、それは中央に住む人たちの論理・・・・そこに暮らす人たちの本当の思いや生活は伝わらない。でも、報道を見た私たちは、これをまた何も考えずに受け取リ、語ってしまう。まだここに出てくる記者は真面目でしたが、昨今のマスコミは、どうでしょうか?危ういです。
中津留さんの舞台に、今回も色々考えさせられました。
ありがとうございました。