期待度♪♪♪♪♪
「わが闘争」から「ルート64」まで(残念ながら「セルロイド」は未見)、鐘下辰男氏の脚本は毎回、この国の歪みを風土病として摘出し、恐ろしいまでに人の業をこれでもかというくらいに描いて見せた。そして松本光生氏の演出は、その風土病にメスを入れ、陰鬱でいてそれでも驚くほど愚直な業を正面から見せしめることに成功したと思う。
ハツビロコウは今回、鐘下辰男氏を離れ、既存の三好十郎の脚本を使うという。時代は戦争直後。永遠のパルチザンの作品は、ハツビロコウの中でどのように消化吸収されるのだろう。戦争を知らない世代が、現代のどのような問題に翻案してみせるのかワクワクする。まさか、忠実に戦後日本人の葛藤を描くわけではあるまい。