満足度★★★★
普遍的なテーマ(平和、人権←男女平等など)を親子5代に亘って受け継がれた秘密を紡いでいく物語。その血筋を巡っての家族の話を縦軸とし、太平洋戦争中の戦局を一変させる発明を進める科学者の傷害事件(江戸川乱歩原作「偉大なる夢」をモチーフ)を横軸として、それを交差させて描く。奇妙な構図の中に普通の人々の暮らしを描き込む。
「科学に国境はないが、科学者には祖国がある」とはフランスの生化学者・パスツールの言葉だったような。公演では、同じ国内において発明の兵器化を急務とする考えと兵器化そのことに疑問を呈する研究者の議論と対立を通して戦時下の状況を現す。どんなイデオロギーも過度な正義はつねに危険であり、政治にすべてを集約させることは多様性を失うかもしれない。
公演は現代日本社会に強い警鐘を鳴らしているようだ。同時に推理劇としての物語性に妙味を持たせる。結果、発明グループのリーダーの真の目的とは…。物語の発想の豊かさに驚かされるが、同時にトツゲキ倶楽部の特長、独特な人間模様の可笑しさに推理要素を加えエンターテイメント化して観(魅)せており楽しませる。
(上演時間1時間45分)