ハイサイせば 公演情報 渡辺源四郎商店「ハイサイせば」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    現実の重みと軽妙な笑い、その絶妙なバランスが素晴らしい。
    沖縄と青森という、接点が薄いと思われがちな2つの地域を
    卓越した発想力と若干の力技で見事につないで魅せる。
    まさに今、現代にもう一度起ころうとしていることを見る思いがした。

    ネタバレBOX

    舞台中央、横長に置かれたテーブルとその前に4脚の椅子は
    全て白い布で覆われ、上から紐のようなものでぐるぐる縛られている。

    ここは海軍省内部、理由も告げられないまま連れて来られた4人、
    青森出身の2人と沖縄出身の2人は、敵に傍受されないよう
    方言による電話通信に協力するよう命令される。
    が、その目的にはある秘密が隠されていた…。

    津軽弁と琉球語という強烈な個性を持つ言語の“わからなさ”がとにかくおかしい。
    特に今回は琉球語の解らなさ加減が突出しており、津軽弁が聞き取りやすかったほど。
    だがその琉球語の解らなさのおかげで、人々は何と理不尽な扱いを受けたことか。
    “わけのわからない言葉を使う、スパイのような怪しいやつ”というレッテルを貼られ、
    軍隊でも他は県ごとに配属されたのに、沖縄だけはバラバラに配属されたという。
    沖縄は今も昔も屈辱的な、不当な扱いを強いられている。

    三上晴佳さんの、沖縄の人とことばに対して敬意を払う態度が素晴らしい。
    わからなさの先にある、ことばとしての力に尊敬の念を抱いていることが伝わって来る。
    「田舎者めが」「ごく潰しか」という海軍少佐のつぶやきは、
    そのまま政府の姿勢を表している。

    同時多発でまくしたてられる二つの言語の解らなさに笑っているうち
    それを冷やかに上から見ている“政府のやり方”に気付く。
    このコントラストが鮮やかで素晴らしい。

    私は畑澤氏の“教育者としての視点”が好きだ。
    「何にも知らずにぼーっとしている日本人」に、常に何かを突き付けてくる。
    まず知ることが全ての始まりであることを思い出させてくれる。
    「方言札」をはじめ、今回も初めて知ることが多かった。
    「遠くで起こることを身近に」というメッセージを発信する
    渡辺源四郎商店の活動をこれからも追いかけたい。





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    2018/01/14 02:21

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