郵便屋さんちょっと2017 P.S. I Love You 公演情報 劇団扉座「郵便屋さんちょっと2017 P.S. I Love You」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    当日パンフレットに掲載された幻冬社 社長 見城徹さんの文章の中に、「つかこうへいへの強烈なオマージュであると同時に、タイトルと設定だけを借りた横内謙介の独壇場」というフレーズがあった。この芝居について、これ以上的確な形容はないかもしれない。

    タイトルになっている『郵便屋さんちょっと』という戯曲を、初演を観た後に近くの図書館で借りて読んだ。なるほどモチーフとして描かれている部分はあるけれど扉座版のキャラクターもストーリーもほぼオリジナルだった。ただし、その短編が収録されていた戯曲集の他の作品からもいくつかモチーフを盛り込みつつ、つかこうへい氏の芝居のエッセンスをみっしりと詰め込んでいる。

    時事ネタも下ネタも差別用語も社会批判もコンプレックスも自己顕示欲もオマージュもパロディも、すべてがつまるところそこに生身の人間がいる、ということに集約されていく。

    クライマックスひとつ手前くらいの場面で、突然拍手が起こった。歌でもダンスでも見得でもない、ある人の長い台詞の終わりだった。

    ああ、そういうことだよな、と思った。劇中で届けられるたくさんの手紙の代わりに、たくさんの言葉を客席で受け取ったのだ。

    そして、つかこうへいさんのテイストやテンポや反骨精神やイロケなどを細やかに再現しつつ、これはまぎれもない扉座の芝居だった。

    登場する方々それぞれの「ニン」に合う見せ場や台詞があって、特に私は今回ある場面で泣いた。中原三千代さんが、郵便局長の浮気相手となり子どもを産んだときの経緯が語られる場面だ。

    つか芝居にこだわるでもなく、三千代さんらしい細やかさと強さの感じられる場面で、素直に言葉にできない大切な想いが、それでも娘に伝わるように語られる様子が胸に迫った。

    劇団員をよく知る座長が書いて演出した舞台なればこそだ。キャストの活かし方だけでなく、つかさん調の長台詞の随所に扉座らしさが感じられた。

    たくさんの花で埋もれそうなロビーには、扉座関連の舞台でお見かけした役者さんの姿も大勢見受けられた。着替えを終えたキャスト陣もロビーに姿を現して賑わう様子が祝祭めいて輝いていた。

    評価とか理論とは流行とかそういうことは私にはわからない。ただ、こういう芝居が観たかったんだよ、と観終わって思った。

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    2017/12/31 02:52

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