祖国は我らのために 公演情報 マコンドープロデュース「祖国は我らのために」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ロシア革命を題材に……というより、ロシア革命そのものを真正面から描いた骨太な物語である。タイトルになっている『祖国は我らのために』は、ソビエト連邦時代の国歌の題名とのこと。

    血の日曜日事件から始まって、2月革命、そして10月革命へと、歴史の教科書の中の単なる言葉だったものが、目前で人間の営みとなり、時代の大きなうねりが平凡な庶民の視点で描かれていく。

    工場で働くニコライ(須貝 英)らは、厳しさを増す労働と少ない報酬に危機感をつのらせていた。このままでは暮らしていけない。そういう切実な訴えから始まる物語の前半は、ニコライの妹 イリーナ(加藤理恵)ら女性たちの働く工場や弟アレクセイ(永嶋柊吾)の所属する軍隊なども含め、市井の人々を中心に動いていく。

    前半では特に、イリーナたちの働く工場から自然発生的に始まったムーブメントが革命になるまでのダイナミックな描写が圧巻であった。

    全体に、台詞も動きも熱量を強調する演出である。久しぶりに帰ってきた弟を囲む家族の会話さえ、舞台の対角線上を足早に行き交いつつ声高に交わされる。出演されている方々にとっては、たいへんな舞台だったかもしれない。

    2月革命の後も暮らしはよくならない。民衆のささやかな希望は、権力に群がる者たちに踏みにじられたままなのだ。

    革命の中のある種の高揚から、しだいにきな臭い雰囲気が漂い始める。女たちの働く工場で革命の指導者的役割を担っていたマリア(小林春世)が、捕らえられていく。仲間をかばうために悪態をつく彼女の毅然とした様子とそれを知って彼女を見送る仲間たちの姿が印象に残る。

    革命家たちの動きが活発になっていく。そういえば、ボリシェヴィキやメンシェヴィキなどという言葉を聞いたのは、高校の歴史の授業以来何十年ぶりかもしれない。そしてとうとうあの男が動き出す。井上裕朗演じるレーニン。彼の怜悧な情熱が、後半の物語を引き締めていった。

    庶民の中から始まった革命は、彼らの思惑を超え、国家を大きく動かしていく。数多くの犠牲のもとに。

    ラストで、舞台上の人々を降りしきる雨が濡らしていった。革命後の時代を予想させるかのように感じられた。『祖国は我らのために』というタイトルが、どこか皮肉に聞こえるラストであった。

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    2017/12/30 22:40

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