満足度★★★★
ホモ・ミームスと名付けられ、宇宙人とか人モドキなどと呼ばれる人間によく似た別の生き物と人間が共存する社会が舞台である。……と言ってもSFではない。
ホモ・ミームスと人間が暮らす社会という背景を共有しながら、4人の作家がそれぞれ異なるシチュエーションで綴っていく。……けれど短編集でもオムニバスでもない。
4人の作家が描く4つの主人公と彼・彼女を取り巻く状況が平行し、ところどころ重なりながら進んでいく物語は、タイトル通り人間であることの意味を直球で問う骨太な寓話となっていた。
見た目では区別がつかない。本人でさえ自分が人間なのかホモ・ミームスなのかわからない。死んだ時に初めて何者であったか確認できる、というその仕掛けは残酷でもあるだろう。
深刻なアイデンティティの問題であり、差別の問題であり、宗教の問題であり、医療の問題でもあり、教育の、福祉の、そして男女の問題でもあった。
若き外科医 西本の勤務する病院では、ホモ・ミームスを治療していたため運ばれてきた人間の子どもを治療できず、子どもは死んでしまった。人間を優先すべきだという抗議が殺到し騒ぎが起こるが病院は反対に、いつでも人間とホモ・ミームスを同等に治療する、と言い始め……。
突然の事故で亡くなった恋人が、溶けて消えてしまったという。人間ではなくホモ・ミームスだった。それでも愛していたことや喪失感に変わりはなくて、でも、宇宙人とつきあっていた、と言われることにやや複雑な感情もあって……。
居場所のない少女たちの援助交際……いや、売春グループ。彼女たちと親しい男はホモ・ミームスであると自称している。学校でのいじめられて宇宙人と呼ばれていた仲間の一人が飛び降り自殺をし、大地と激突した瞬間溶けて消えてしまった。残された少女たちは……。
発達障害で仕事も続かない。自分は人間だろうか、そうではないのだろうか、と悩む女が、
ある日自分を受け入れてくれる場所を見つける。それは、ある宗教団体だった。そこで彼女は自信と強さを身につけようとするが……。
そういう4つの流れが、少しずつ関わりあい、ひとつのテーマを浮き彫りにしていく。書き手の違いによってややテイストを変えながら、4つの状況はどれも興味深い。なるほど、「劇作家女子会。」なのだと思った。彼女たちの書いた戯曲の面白さがまずは前提にある。
ストーリー自体に加えて、シンプルなセットの中でさまざまな場面を演じる工夫や休憩前後の遊び心を感じさせる仕掛けなども含め、観ていていろいろと楽しい舞台であった。
演出は赤澤ムックさんで、4つの物語の多彩な登場人物や場面を生かす手腕も見どころだ。重い題材に真っ正面にぶつかる部分もトリッキーな遊びの部分をも含め、戯曲を活かしたバランスのよさが感じられた。
加えて、ストレートプレイではなくミュージカルだ。
歌もダンスも予想以上にたっぷりあり、クォリティも一定以上で見応えがあった。特に、ヘルス嬢チームのダンスや2幕はじめのパレードのパワフルさが印象に残った。
音楽も生で、舞台の奥でバンドが演奏する様子も観ることができた。
キャストの人数も多く、それぞれに熱のこもった演技を見せてくれていっそう引き込まれた。
こうやって作品が立ち上がるまで、ずいぶん時間がかかっただろうなぁ、と観終わってから思う。
できれば、流れを把握した上でもう一度観たい作品であった。