サンタクロースが歌ってくれた 公演情報 演劇ユニット百酔sya「サンタクロースが歌ってくれた」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    劇中で演じられている出来事が、劇から飛び出してくるような立体型のミステリー物語である。魅力的な脚本・演出であるが、劇中の設定である大正時代の登場人物(芥川龍之介、平井太郎(後の江戸川乱歩)が、いつの間にかその役を演じている役者に代わる。そのことによって有名作家という魅力的な人物像が失われるという勿体無さが感じられた。
    (上演時間2時間10分)

    ネタバレBOX

    セットは横一面に段差を儲け、上手・下手側にギザギザに切り抜いたような厚手の布(奥から黄・緑・赤色)が掛けられているだけのシンプルな、端的に言えば素舞台に近い。全体イメージはクリスマスツリーを連想させる。この劇場ならではの下手側の別スペースを利用し、別空間を現している。

    梗概…ゆきみはクリスマス・イブに友人すずこに中目黒の映画館で「ハイカラ探偵物語」を観に行こうと誘う。しかし、すずこが約束の時間に来なかったことから1人で中へ。「ハイカラ探偵物語」は、大正5年のクリスマス・イブ。華族の有川家に怪盗黒蜥蜴から宝石を盗みに来ると予告状が届く。警部が来たが何となく頼りない。有川家の令嬢サヨは友人のフミに、小説家芥川に探偵役を依頼できないか相談し、芥川は友人の太郎と共に有川家を訪れ、怪盗黒蜥蜴と対峙する。
    映画は序盤のクライマックスシーンにさしかかり、芥川は犯人の名前を言おうとするが口籠る。本来ならその場に居るはずの黒蜥蜴が突然消失する。部屋は厳重に警備されていて、外に逃げる事は不可能。何処へ逃げたのかと焦る登場人物達だが、突然芥川は黒蜥蜴が「銀幕の外」に逃げたと言う。そこで芥川・太郎・警部の三人は銀幕から飛び出し、ゆきみは彼らと一緒に黒蜥蜴を追いかけることになる。一方、すずこは映画館から出てきたメイド服の女性とぶつかる。その女性は映画から出てきたと言う。

    有名作家である彼らが、映画監督に事情を聞こうと訪ねる過程を、現代の東京見物と重ね合わせている。時代(感覚)の違いは人の見方、考え方にも影響する。現代の見知らぬ東京の街を右往左往しながら監督の家へ。いつの間にか芥川・太郎という人物が、それを演じている役者に代わっているようで現実的なイメージへ変化してしまう。映画という現実、その中の登場(役名)人物という架空(実在したが、故人という意で)、その虚実綯い交ぜの世界観のまま観せて欲しかった。

    役者の演技は確かでバランスも良い。それだけにファンタジー感を大切にしてほしかったと思う。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/12/06 11:02

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