満足度★★★★★
鑑賞日2017/10/25 (水)
トム・プロジェクトさんのお芝居を観ると毎回色々なことを考えさせられることが多いのですが、1960年代を舞台とした今回の作品も同様の感想を持ちました。高度経済成長期は自分が生まれるだいぶ前のことなので世の中の目まぐるしい発展を実際に体感したことはないのですが、こういった1960年代のお話を観ると、自分がその時代にタイムスリップし、当時の様子を覗いているかのような不思議な感覚になります。今回は車社会の発展とそれに伴う弊害のようなものにスポットを当てた作品。車の普及により便利になる一方で失われていくものもある。「豊か」という言葉は決して形のあるモノだけに当てはまるキーワードではない。本当の「豊かさ」とは何なのか。車社会だけに限らず、世の中あらゆるものに対して本当に今の形が正しいのか、など色々と考えさせられました。登場人物の立場や複雑な心情、葛藤が絶妙に描かれており、物語の世界にグイグイと引き込まれた秀作でした。「明日があるさ」という曲はこれまでに何度も聴いてきましたが、今回ほど歌詞が心に突き刺さったことはありませんでした。作品内容に非常にマッチしていたと思います。