ストアハウスコレクション・日韓演劇週間Vol.5 公演情報 ストアハウス「ストアハウスコレクション・日韓演劇週間Vol.5」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/10/04 (水) 19:00

    3作品とも秀作。これは絶対観るべき。
    初日の『ゲシュタルト崩壊』を観て、休憩時間にすぐ、翌日の『サイコパスは猫を殺す』を予約。一早く3作完全制覇に乗り出しました。
    『ゲッペルス劇場』では、ドイツの話をハングル語でやることへの違和感(でも、日本語だったら何の違和感もないのに)と、演技と字幕との視線の移動の慌ただしさで、かなり観劇に戸惑いましたが、ものの10分もすれば慣れて、舞台を満喫できました。
    翌日の『サイコパスは猫を殺す』では、現代の韓国が舞台で、字幕の位置も把握できていたので何ら問題なく楽しめました。

    『ゲシュタルト崩壊』
    「突如発見された謎の回転物」が何かが判らず、とても抽象的な説明書きを読んだ時には、シュールな演劇なのだろうなあ、と思いましたが、実はかなり土着的(日本的)で人間の業に迫る話。舞台は地獄です。
    役者さんが素晴らしく、役柄に応じた変幻自在の立ち回りを見せます。劇後に役者さんを拝見して驚いたのは、役者さんのサイズは普通なのに、舞台上では異なるサイズに見えたこと。見聞鬼(小鬼。とてもチャーミング)の磯部さんは、舞台では子供らしく小さく、閻魔大王の細村さんは、舞台では最高権力者としてとても大きく見えました。
    審判を取り仕切る秘書官の鬼は、審判の時には背筋を伸ばして溌溂としていたのが、職を辞し賽の河原で石運びをするようなると、とたんにショボクレた生気のない存在になる。複数の役を兼ねている役者さんも、役に応じて大きくなったり小さくなったりする。演技とは身体表現なのだな、と改めて思いました。
    鴻上尚史さんの舞台の影響ですか、ダンスあり、仕掛けあり、小ネタあり。

    『ゲッペルス劇場』
    ヒトラーと共に、自分たちの強大なコンプレックスを糧に、ひたすら社会への報復に邁進するゲッペルスの姿は、おかしくもあり醜悪でもある。わずかな被害者は、自らを巨万の人々への加害者となる。神とは、平等とは。
    舞台に投影される当時の映像は鮮烈で、時折ふりまかれるユーモアで弛緩した気持ちに、すぐに冷や水を浴びせる。
    ヒトラーを前大統領になぞるとすれば、ゲッペルスはあの人かな。

    『サイコパスは猫を殺す』
    ひたすら滑稽な団地の会議は、各々の狂気を披見させ、次第に背筋を寒くさせていく。サイコパスは誰だ?ラストも衝撃(笑劇?)の2段落ち。とにかく、嫌~な作品。後味は決して良くないのが魅力かな。

    ネタバレBOX

    『ゲシュタルト崩壊』
    回っていたのは死生、つまり輪廻転生のことでした。
    ラストの3段落ちは、舞台の伏線回収もしていて、すっきりと、そして感動的です。
    見聞鬼の死んだ親への慟哭は、彼女の内面を前面にさらけ出し涙を誘います。
    閻魔大王が、現世と天国への厭気から、何者かに動かされている自分を否定するように地位を投げ出すのには強い共感を生み出します。
    そして、秘書が繰りした、同じ人物をひたすら裁き続ける様は、自らを永遠に裁くという地獄だったのですね。

    『ゲッペルス劇場』
    ゲッペルス役の役者さんは、この役で賞をとっただけあって安定のうまさです。でも、歴史上の人物、それも画像が出るとなると、どうしても、元人物の方に印象が振られてしまうのは仕方がない。ちょっと大きすぎるんだよねえ。ヒトラーも同様、大きすぎる。
    ベッセル役のキムさんは、その狂気を帯びた目つきと可逆性あふれた言葉使いが最高。
    韓国の石橋蓮司と称そう。ベッセルは、先生と牧師、母親と並ぶ、いやそれを超えるゲッペルス誕生の立役者だな。

    『サイコパスは猫を殺す』
    惜しむらくは、301号室の男とストーカーまがいの警察官がラストに関わらないことかな。単なる賑やかしに終わっているのがもったいない。301号の男と警察官は同一の設定でも面白かったのでは。であれば、彼が最初の被害者になるというのもありだったような気がする。
    ちょっとした気の病は、集積するととめどもない狂気になるという話。

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    2017/10/06 13:21

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