人魚秘め 公演情報 ガラ劇「人魚秘め」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    梗概はアンデルセン童話「人魚姫」であるが、タイトルの「秘め」は現代日本の深刻な問題を示すもの。幻想的な舞台演出であるが、これは”幻”ではなく、”現”であるから切なく悲しい。「姫」が個人的な”思い”であるとすれば、「秘め」は社会的な”重い”である。内容の重さを演出で観(魅)せている。少しネタバレするが、深海の生き物を被り物で微笑を誘う。
    全体的には観客の心象に訴える公演で、観る人の感性、またこの問題に直接・間接に関っている人は思い入れが強いのではないか。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    客席の挟み舞台。中央に薄い半透明の青布(工事現場用のブルーシートではない)を何枚か敷き、シーンに応じて持ち手が変わり波打つように揺らめかせる。その布の揺れ(波間)に人物や魚介類などの姿が見え隠れし、海上・海中をイメージさせる。そこに照明(色彩)が照射され幻想的な雰囲気を漂わせる。一方、周囲の壁は灰色で、まるでコンクリートを連想させる。

    梗概…恋する人には妻がおり、その人の弟から思慕されるという三角関係のような展開。この恋焦がれるのは「人魚姫」をモチーフにしているからで、本公演のテーマは東日本大震災による原発事故の後始末を巡るもの。海の生き物たちが次々に変調をきたし死んでいくが、それは核汚染物質を海洋投棄したことが原因である。汚染された水を海へ、しかし、水が汚染されていることを知らない。一見何の問題もないように見える行為に隠された恐ろしい真実。うたかた(泡沫)の夢=泡→灰をイメージさせる。秘め事は、人間の手には負えなくなった文明(原発)への警鐘を意味するようだ。

    人間界(兄)における秘密、隠蔽、焦燥などの苦悩。一方、人魚姫に恋する弟は純粋な愛に殉じようとしている。

    人魚姫の悲恋と原発汚染水で死んでいく、その悲劇をダイナミックに繋げるのは、アナグラムの機知、笑いと逸脱(被り物)を盛り込んだ脚本・演出と、詩的な台詞の印象付けであろう。そして役者たちは海中にいる生き物となり舞台を水流のように横切りシーンを転換したりする。それには多くの役者が、本来の役柄以外にアンサンブルとしての役割を担っている。

    問題を闇に葬るのか、聞かせる相手もなく海の底で横たわる物たちの怨嗟が聞こえてくるようだ。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/10/03 16:25

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