ワンダフルワールド 公演情報 甲斐ファクトリー「ワンダフルワールド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    序盤は緩い芝居と思ったが、段々とダークな物語へ変容しラストはとてもシュール。日本を代表する歓楽街を背景に、その底辺で生きる男と不器用な生き方しか出来ない女の再会は悲しい。
    ちなみに作・演出は甲斐マサキ氏、そしてメインの登場人物は山梨県出身という設定はシャレであろうか。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、数個の大小BOXがあり、シーンに応じて縦横に組み替えテーブル、机、椅子に見立てる。
    梗概…物語は、甲府ワイン酒造家の富豪夫人・朝比奈怜子(山田由希子サン)が息子の難病治療(後に心臓移植手術と分かる)を依頼しているところから始まる。一転、某会社の事務室。そこで働く派遣社員・幸子(若林よるせサン)は人との関りが上手く出来ない。さらに場面は新宿歌舞伎町のホストクラブへ。そこで働く翔馬(野村亮太サン)は親の事情で国籍がない。この3人を中心に物語は展開する。ひょんなことから幸子が行ったホストクラブで翔馬と会うが、2人は幼馴染で十数年ぶりの再会。幸子は翔馬の紹介で新宿の裏社会で働くことになるが…。
    微温的な主題を描く作品かと思ったが、ダークな社会、深層の人間的な軋みを男女に背負わせる。

    無国籍の問題については、マスメディアでも取り上げられることがあり、当事者は学校教育が受けられない、各種契約が出来ないなど、人の存在自体が(書類上)無とされている。一方、幼い時から友達作りが出来ず、派遣先の会社でも「派遣さん」と呼ばれ、名前で呼ばれることがない。その意味で一人の人間として扱ってもらえない。この2人が出会った空き地、そこから見える光景の美しさ、一方、心に抱く哀切が痛々しい。孤独な2人の邂逅は、更に悲しくなる結末。

    チラシにある”王子”は、「幸福の王子」(人間が必要な脳以外は臓器売買-王子の鉛の心臓以外は貧しき人々へ)になぞらえて、女性に夢を与えるホストと思ったが、別の意味でもあったようだ。さらに引用させてもらえば「迷宮のような都市で彷徨う二つの魂。引き裂かれる心臓」の一文に胸が痛む。
    さて、新宿という繁華街の中の孤独。自分では、街中の孤独に心が動く。裏社会であっても自分が必要とされている。その闇背景は別にして、充実感は理解出来る気がする。

    物語はきちんと収束する展開で、心情もしっかり観て取れる。演技力に差が見られるが、メインとなる人物は豊かな感情表現でバランスも良い。シンプルなセットであるが、情景・状況はつかめる。幕(影)絵の拙さも味わいがある。総じて良く出来ていると思うが、今ひとつ感情移入が出来なかった。その理由がハッキリしない不思議な公演であった。

    次回公演も観てみたいと思います。

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    2017/08/14 18:27

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