満足度★★★★★
タイトルを劇団名とそのまま同じ「青春事情」としても全くおかしくないと思えた「ライブ イン トーキョー」
まさに“男の東京ひとり暮らし”が目の前で展開していました。
フリーターゆえの経済的悲壮感は抑え目で、一部の登場人物は若干デフォルメされていましたが、これにより笑えるうえ作品として伝えたい内容がよりクリアに沁み込んできて実にいい塩梅です。
自分自身は既にサラリーマンとしての上京でしたが、その当時のあれやこれやが呼び起こされてジ~ンときます。
余談で申し訳ありませんが、本作品で自身以外にも思い浮かべてしまう事がもうひとつ。
初めての東京ライフ、私の下の階には、劇中の主人公と同じ音楽をやっている早稲田大の学生さんがいて、私は彼を「ミュージシャン」と呼んでいました。
たまにエントランスで会えばニコニコ話しかけてくる人懐っこい性格で、遅起きした日曜の昼には、決して上手いとは思えない弾き語りが下から漏れ聞こえ「あ~ミュージシャン歌ってるな」とわるいけど窓を閉め、自分の好きな音楽をかけ、聞こえない様にしていた事もありました。
ある深夜「ちくしょーっ、なんでだよっ!」という怒号で目が覚め、どうやらミュージシャンに何かとてつもなく悔しい事があったらしく自室でひとり泣きながら大暴れしている様でした。
この世の終わりみたいな荒れように何があったんだろうと思いつつも結局また眠りに落ちてしまいましたが、その数日後に「こんにちは~ッ」と挨拶してくれるミュージシャンはとても元気そうでした。
私の方が先に、そのマンションから引っ越すことになり、挨拶の際にもまだ彼は就職していないようで、ちょっといつもの元気者ではなかった事が気になる最後でした。
大人だけど大人にはなりきれない。でも前に進むしかない人生のひとコマ。
「ライブ イン トーキョー」もそんなほろ苦い味のする作品でした。