白い花を隠す 公演情報 Pカンパニー「白い花を隠す」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    グリーンフェスタ2017参加作品。主宰者は、当日パンフに本公演は多くの問題が重層的に含まれていると書いている。それは「慰安婦」「組織」「家族」「表現の自由」「自主原則」「同調圧力」「メディア」「政治介入」「公平中立」…。人はそれぞれ違う。考え方、価値観が違うのが普通である。

    物語は、2001年に起きたNHK番組改編事件、旧日本軍による「慰安婦」制度を裁く女性国際戦犯法廷を紹介しようとしたドキュメンタリー番組をモチーフ、主軸に捉え、それに絡むいろいろな脇筋から成っている。

    複雑に絡み合う個人の思惑と報道の行方を巡って物語は漂流し始める。芝居としての要素、ドキュメンタリー要素、その虚構と現実が絡み合い、真実を飲み込みながら表層にある事実のみが肥大していくようで、現代日本の観えざる力を映し出そうとする力作。

    ネタバレBOX

    喫茶店ペチュニア店内が舞台。桃語は、MHK、下請け制作会社に旧日本軍による従軍慰安婦に関する民衆法廷を扱う番組制作を依頼するところから始まる。スタッフは歴史的な検証を試みようと意気込む。しかし、放送目前にしてMHK側から番組内容の一部変更の指示が出される。そして最終的には当り障りのないものへ改編させられる。

    一方、物語はこの喫茶店の家族関係も描く。下請けの制作会社のプロデューサーとこの店オーナーは恋愛、結婚する。この喫茶店は姉妹(妹がオーナー)で住んでいるが、問題の番組改編が進むと同時に、姉妹の関係も仲違いするように浸食してくる。喫茶店の経営、夫となった男の稼ぎも気になる。
    表層的には、社会派の骨太作品であるが、日々の暮らしを大切にする家族ドラマを取り込み、リアリティを増す。それゆえ、物語のベースにある高い意識と強い社会性がより顕著になり重厚で格調あるものにしている。

    演出は、時間の経過を示すような電光掲示が緊迫感を出す。主筋は2000年12月から2001年1月の番組制作、改ざんへの対応、その後の無気力・喪失感という、ごく限られた日時を喫茶店内という限定空間で描き出す。緊迫した台詞の応酬、事物と一体となった緊密さを観せつける。事物とは客席寄りにあるペチュニアの植木花の間引きする行為。切り揃えないと枯れてしまう、その”管理”することが必要であるという比喩。その花の原種は白い花であり、それを見ることは難しいという。色ある花は咲くが、原種の白い花を見ることは難しい、そのことは事実は見えるが、真実は見難いと…。事実という点を嘘という線で繋いだニュース、ドキュメンタリー番組として放送する。そこには何が事実で、その裏にある真実は掴み難いという怖さが観える。
    一方、姉妹の感情からなる話は、性格の違いが物語のテーマの”隠す”を暗喩している。自分の心に正直とは、その表現を姉妹の心情対立という分かり易い構図で魅せる。

    0

    2017/05/18 18:10

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大