CHOICE 公演情報 Charmer Company「CHOICE」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    チラシの絵柄は祈るような…作・演出の千賀多佳乃 女史は当日パンフでこの物語は「宗教の話ではないのです。人の心の話なのです」と書いている。もっとも挨拶文の流れからして宗教に無関係ではなく、そこは十分意識していることが分かる。

    特に「パレスチナ問題」(「問題」という表現が相応しいかは別)を連想させるような展開である。サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」を再読したくなるような…この公演で描かれる宗教の変遷、布教内容は二大宗教の対立という単純構図である。「ベルリンの壁崩壊」「ソ連邦(国家体制)の崩壊」以後はイデオロギー対立よりも宗教で特徴付けられることが多いと言われている。
    この公演もそうした宗教(観)を意識している。宗教上の対立が直接の契機ではなく、民族紛争・地域紛争・政治闘争・テロ行為などが絡んで勃発する、そんなことが垣間見える。
    公演は、男女2人の主人公が牽引するが、それは「ロミオとジュリエット」をイメージさせる。シェイクスピア戯曲の”家”の確執を”宗教”に置き換えて、その無情にして無常を嘆くあたりは面白い。
    (上演時間2時間30分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、白基調の石造りの街をイメージさせる。左右に非対象の階段、下手奥には傾斜・坂道を作る。そこに色彩豊かな照明を当て情景・状況を現す。

    レクティ教とウニ教が過去の諍いを乗り越えて共存しているが、それは表面上のこと。そこには土地を中心とした恩讐が渦巻いている。宗教という正面からは表現し難いテーマ、それを今の世界情勢に人間(個人)の愛という普遍的な思いに背負わせて観せる。その視座から分かり易く展開しようと試みており、物語の捉え方としては面白いが、冗長(丁寧に描こうと説明過多)だったと思う。特に前半、土地(イメージはエルサレムか?)を中心に、そこに住んでいる信仰宗教が違う人々の差別と貧困、表面的な平和と平等への懐疑心を描いている。そのシーンが多いような…。いくつかのエピソードを挿入し、あとは観客の想像力に委ねてもよかったと思う。

    冒頭、「オ-バーの選択日」として、一定の年齢に達した時(学院卒業時?)にレクティ教かウニ教の選択を行わせるが、そもそも政治的・経済的な不均衡の中で、真に「宗教(信仰)の自由」が選択出来るのであろうか?物語の根幹に疑問が残った。

    また、IS(千賀女史によれば、現在ではDaeshと呼ばれていると)の行為、それが個人的な復讐に端を発している。演劇的な戦闘シーン、政治的な駆け引きの見所もあった。それだけに見せ場、盛り上がりに強弱があった方が印象深い。
    見せ方は、宗教の違いを色…レクティは青、ウニは赤という違いで、群集シーンは識別させるなど工夫をしていた。

    なお自分が観た回は、何人かの役者が台詞を噛んだり言い直したりしており、緊張なのか練習不足なのか、いずれにしても残念であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/05/02 21:51

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