満足度★★★★
戯曲も書いてるアゴタ・クリストフ原作の世界的な話題作は90年代前半だったか・・二人の男の子(兄弟)が親戚の家であくどい所業をはたらく話、と憶えていた。二人は双子だった。親戚の家は一人暮らしのおばあさんの家だった。おばあさんは温和な人でなく激烈な人だった。二人は人の生殺という領域に手を延ばしていた・・等々のストーリーの断片、そして原作の持つ雰囲気を徐々に思い出してきた。
その意味でこの60分のパフォーマンスは、原作を尊重し、原作の魅力を具現しようとしたもので、「悪童日記」のタイトルに惹かれてやってきた人間の期待を裏切らず、しかも身体を酷使して全体の美や雰囲気(狂気など)を形作ってみせた極めてクォリティの高い「芝居」だった。
5名のパフォーマーの内俳優が二人、他は舞踊系のようだったが、皆が発語に優れ、身体性にも優れており、判別がつかない。
小さな双子の男の子と、自分の娘が自分に預けていった二人の孫を「あのあばずれの子が!」と罵る祖母の関係。戦争がもたらす社会と人間の歪みが二人の子供の中に悪魔を住まわしめたという、たしかこの物語で描かれる子供の所業を正当化する逃げ道があるが、むしろ二人の大人を出し抜く所業のほうに悪魔的な快哉を上げたくなる。一方「芝居」のほうでは終盤に哲学的な世界に入り、粛然とした。原作ではどうだったか・・