「谷のかげ」「満月」 公演情報 劇団俳小「「谷のかげ」「満月」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    アイルランドの近代劇一幕物。どちらも翻訳は松村みね子女史、上演台本・演出は松本永実子女史である。「谷のかげ」は短編であるが物語性が伝わる。一方「満月」は比喩なのか、錯覚なのか、その混沌とした展開が抽象的のようで難解であった。
    「谷のかげ」(35分) 「満月」(55分) 途中休憩(セット転換)15分

    ネタバレBOX

    「谷のかげ」(ジョン・ミリントン・シング作)
    山に囲まれた谷間にある小屋…レンガ作りの重厚感がある。上手側に暖炉、中央にテーブルと椅子、下手側はベットが置かれている。

    この家には、年老いた主人・ダン(勝山了介サン)と若妻・ノラ(吉田恭子サン)が住んでいる。ノラはダンが亡くなり、その始末に困っている。そんな雨の日に旅人(斎藤真サン)が一夜の宿を求めて現れる。彼はノラが「死体」の始末のために近所の人の助けを借りに行く間、小屋の番をすることになる。しかし、その間に死体は起き上がり…。

    風が不気味な音を立て吹く音響効果。それが寂寥感を際立たせるが、別の視点から観れば人の孤独な心情を表しているようだ。毎日繰り返される平凡な暮らし、そこへ旅人が現れ、少しの変化が見える。財産目当ての打算による結婚生活。そこから女性の自立が芽生える。一方、高齢・孤独への不安。人間(男女)の嫉妬と打算、夫婦の普遍的なテーマが垣間見える。

    「満月」(グレゴリー夫人作)
    「谷のかげ」から一転して、簡素な舞台。上手側に木箱2つ。下手側には片輪が外れた荷車。奥は閉ざされた扉があり、時々、町の外が見える。

    クルーンの町の人々から尊敬されているハルヴィー。しかし、神父の迎えに乗じてクルーンの町を逃げたいと思っている。満月の夜に、狂犬が町に現れ町の人々が大騒ぎをする。そんな時、突然クルーンに戻ってきた狂人のメアリ。いつしか物語が歪みだし、住民たちとメアリのどちらが正常で狂人なのか…。

    序々に自分以外は変人、狂人という意識に変わっていく。その歪で錯覚するような感情が精神を病んでいるように思える。また町の内・外という観点からみれば異次元とも受け取れる。彼岸と此岸の世界を往還しているのか、正気と狂気の交感か…人は自分こそが絶対正しいと信じている、その傲慢な感情が透けて見える。その感情が顕わになるのが「満月」の夜だという。

    登場しない神父の存在は、登場人物の由り立っている場所、世界はどこか。そもそも生存しているのだろうか。狂人の女性の白い衣装が病院着のよう。物語のシーンは分かるものの、全体の流れが難しい。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/03/21 18:38

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