全段通し 仮名手本忠臣蔵 公演情報 遊戯空間「全段通し 仮名手本忠臣蔵」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ジグソーパズルのように11個(段)のピースをはめ込むことによって物語全体(主筋)が観えてくる。もっとも一つ一つのピースが大きいこともあり、その一片(脇筋)だけでも楽しめる内容になっている。
    この仮名手本忠臣蔵は江戸・元禄14年に起きた赤穂事件の史実を基に、それから47年後に注意しながら著されたもの。当時は幕府批判になることから、事件の場所、人物名などを変えて上演している。本公演はその魅力を余すことなく全段を観せる。
    (上演時間3時間 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、可動式(キャスター付)衝立6枚を自在に動かし、その並びや色合い(衝立に単色の布を掛け)を変えることで情景・状況を描き出す。また小物(扇子など)は、脇差、文などをイメージさせるなど、状況をわかり易くしている。

    この道具に対して、衣装はその状況下にある登場人物は皆同じような物を着ている。赤穂浪士という装束による「制服時代劇」は、その制服に象徴される帰属意識こそ、和合と結束を尊ぶ日本人の心をつかむ。また敗者(弱き者)を美化することを好む日本社会特有の精神的傾向を最も顕著に表している物語。その外見ではなく、役者の体現を通して人物像を表現している。(浄瑠璃)形式なのか、その歩き方や所作はある型のように思える。しかし伝統的な芸能を模しているが、そこには自由度、創意工夫を凝らした面白さを観ることが出来る。

    一段ごとは個々の人物状況、例えば早野勘平・お軽という浪士とその女の挿話という視点で観て取れるが、全段を通して観ると、そこには当時の武家社会という視座に変わってくる。至誠を全うする死生観、そこにある武家社会の理不尽さが江戸町民の好奇によって支えられている。

    大序から討入りまで、エピソードを割愛することなく全ての段を網羅して主要人物を漏らさず登場させた、という。浅草の舞台ではリーディングであったが、本公演は”聴く”という魅力に”観る”という視覚の刺激を加え、より物語を分かり易くしていた。もっとも視覚に訴えることは、その観たことが全てで、物語の情景なりを想像するという楽しみは少なくなるが...。それでも初めて「仮名手本忠臣蔵」を堪能するのであれば、本公演の試みは素晴らしいと思う。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/02/21 20:01

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