棒が歩いて犬に当たるくらい納得できない事件の顛末 バツイチ探偵・興呂木参次郎の事件簿 公演情報 東京ストーリーテラー「棒が歩いて犬に当たるくらい納得できない事件の顛末 バツイチ探偵・興呂木参次郎の事件簿」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2017/02/18 (土)

    座席1階1列

    価格3,500円

    おそらくブディストホールでの観劇は15年ぶりくらいだと思う。この空間は和む。

    舞台はというと、優しい芝居だ。
    設定や人物像を大事にして、けしてデティールをおざなりにしない演出。律儀といってもよいくらいに、描くべきことをきちんと描く(叔母さんとの電話のシーンとか)。
    舞台装置の移動も淀みなく進められ、車や電車を椅子やソファーで描く技も熟練している。小物へのこだわりもすごくて、おもすび村に住む夫婦が使う携帯電話は、単なるガラケイではなく、アンテナ付きのやつ。土砂崩れを整備するための荷車、スコップなどもおざなりではない。

    伏線もしっかり張っていて、「犬も歩けば棒に当たる」というセリフは、冒頭で用意されているし、「納得できない事件の顛末」も単純な落ちではなく、状況こそ異なるものの、前半部で興呂木参次郎に同様なリアクションがあったりする。だから、こういう人物なんだなという説得感が強く印象に残る。
    小ネタの応酬に、観客は大喜びだ。

    会場は年配のご婦人が多く、子供さんも目にした。安心して、役者さんたちに身を任せて観ていられる芝居だということを知ってきているのだろうなあ。築地本願寺が参拝者なんかに広報なんかしているのかしらと、ふと思う。

    ネタバレBOX

    ただし、気になる点もあったことは事実。
    細かいことはいろいろあるのだが、
    何で興呂木参次郎を雇うことを促した社員が、それをもって会社を辞める口実になるのかが判らないし、おもすび村へは、駅からバスもタクシーもなくて、皆へとへとになって歩いてきたのに、後から来る人々は平気の平左(叔母さんまでも笑顔で来る)。

    しかし一番気になったのは、物語構成としてはどうなんでしょう。近くの席の方が、役者さんに話していたのを聞いて、私も、と思ったのだが、各パートで雰囲気がバラバラなのである。

    前半、気の強い有能な役員秘書(女性)と息子の紹介で入った社員(男性)との確執があり、それぞれ怪しげな言動があり、嫌が上にも事件の予感が色濃く漂う。赤川次郎のようなミステリーもあるのだから、そちらの方に進むのかと思い、会場はやや緊張。2人の間には何があるのか、彼らは何を企んでいるのかと思わせておいて、一方の男性の謎はあっけなく解けてしまう。えっこれで終わりなの。彼はとても良い人でしたとさ、チャンチャン。

    途中からのどかな田舎の労働を通した人間形成のお話に。

    もう一つの女性側の謎は、田舎での労働や仲間作りによる息子の自立を描ききった後に、最後に取って付けたように収束される。そして、悪事を暴かれたにも関らず、社長に強弁を吐く秘書に対して、従業員が社長への愛情を語りながら、秘書に強く反駁するシーンでまとまる。まるで松竹新喜劇じゃないか。

    物語の入りの雰囲気(興呂木参次郎周辺のゆるーい雰囲気と、社長の息子の事故の隠ぺい工作や先の2人の登場の緊迫感)がとてもよかったので、もう少しユーモアミステリーを追求してほしかったのだけれどなあ。

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    2017/02/20 17:28

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