その人を知らず 公演情報 東京デスロック「その人を知らず」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    この物語の幹は、かなり太い
    どんなに手を加えても揺るがないような「とっても太い物語」を感じた。

    デスロックだからたぶん80分、長くても90分ぐらいかな、と思い出かけた。ところが、なんと休憩を挟んで180分に迫る長さであった。
    確かにお尻は痛くなったが、物語には引き込まれた。台詞ごとにちょっと感動していたりした。

    物語は強く、魅力的であり、それだけでも先へ先へとひっぱる力があったことは間違いないのだが、このような刺激的で予測のつかない演出だったから、よけいに、どうなるのか、どういう結末へ向かうのか、といった牽引力が増加したのだろう。それは、普通に舞台セットがないだけ、よりストレートにこちらに届いてきたこともあるのだろう。

    ああ、面白かった。

    ネタバレBOX

    終わって考えたのは、今、この芝居が我々に示すものがあるとすれば、それは何なのかということだ。

    空気の読めないほどの主人公の盲進は、一見、世界から戦争がなくなることに通じるような気もするのだが、逆に戦争に進めるのもそういう盲進(あるいは妄信)がなせることで、主人公のことを手放しで「良い」と言うことはできない(主人公が徴兵拒否に立脚するのが「宗教」ということもあり)。
    主人公よりも、空気を読みすぎる一般の人々、簡単に転向してしまう人々にこそ、問題であるということなのであろう。この戯曲が発表されたその時点ではそのことは、多くの観客が痛いほど感じたと思うが、今、それがピンとこない我々も考えなくてはならないのではないか、と思ったりした。

    それにつけても、とてつもない長台詞と、無理な体勢などなど、役者は大変だなと思った。

    今回は、日の丸のもとにある、数台の机がセット代わりだったが、戦中は、それが整然と置かれ、隣近所や公権力との密接感、閉塞感が感じられ、戦後の雑然と机が置かれる様は、戦後の混乱期を思わせた。
    机が孤立してそれぞれに乗るシーン(しかもぐらぐらとしていたりする)に、家族や地域のつながりの解体を感じたというのは考え過ぎだろうか。

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    2008/12/30 04:31

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