【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」 公演情報 稲村梓プロデュース「【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    前回公演(2016年・中野)の時と比べると、 つかこうへい の思いが強く感じられた。物語に大きな変化はないが、前回公演にあった遊びのような緩衝さは少なく、その分、硬質さが増した仕上がりになっていた。その意味で演出に違いを持たせ、それに伴って演技も変化する。それゆえ再演であっても前回と違った面白味を感じた。
    (【Kチーム】 上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、前回公演同様、古びた机、その上に黒電話、捜査資料などが置かれている。音楽は冒頭の「白鳥の湖」は定番であるが、それ以降の劇中音楽は変えている。その点でも公演の印象は違ってきている。音響は前回公演と同じ 久志瞳女史が担当しているが、そのセンスは光る。

    また前回公演でもあった観客を立たせること。他方、前回はなかったと思うが、木村伝兵衛が走り仰向けに倒れるシーンなど、偶然か必然(演出)か判然としない。そのハラハラ、ドキドキ感に酔う。さらに、前回は警視総監を登場させているが、本公演では別の人物が登場し…。再演に対する工夫と楽しませ方、そのサービス精神が心憎い。

    さて、物語は警視庁の木村伝兵衛部長刑事の取調べを中心に熱海の殺人事件の概要をなぞりながら、その過程で事件の底流にある問題を抉るもの。
    つかこうへい のペンネームの由来と言われている”い つか公平 に”を強く意識した公演のように思う。

    在日への人種差別への思い(代弁)を独白・激白、その故郷を追われた慟哭が胸をしめつける。また同性愛者を登場させ、その性への偏見差別、職業・職場、さらには社会進出における男女差別、権力至上への揶揄など、色々な問題・課題を浮き彫りにしてくる。一方、人が感じ持つ優しさ、哀しさ、孤独、気概などの人間讃歌とも受け取れるシーンの数々。大山金太郎(容疑者)を一流に仕立て上げることが、事件の底流にある本質を炙り出す。この硬質で骨太い描きの中に、ダイコン割り、モノマネなどの小ネタを挿み和ませる。この緊張・弛緩のほど良い刺激が2時間という時間を飽きさせない。

    つかこうへい の思いは、やはり役者の演技力という体現なしでは伝わらない。特に主人公の木村伝兵衛部長刑事(稲村梓サン)の力強く凛とした姿と愛嬌ある仕草、また山口アイ子の切なくも強かな女、その異なる女性像を自在に演じ分けていた。それを支える男優陣との絶妙な遣り取りに人間味が…そんな滋味溢れるものがしっかりと観てとれる。

    原作の意を表した脚本、それに魅力付けした演出、そして充実した演技、さらには舞台美術(音響・照明)など全体が調和した公演は観応えがあった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/02/03 18:55

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