愛のおわり 公演情報 こまばアゴラ劇場「愛のおわり」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ■パスカル・ランベール天才!/約140分■
    最初の50分くらいは「こんな劇を絶賛するフランス人って見る目ねえなぁ~。。」と呆れ、★★か★にするつもりでいたが、どっこい、大傑作でした。

    ネタバレBOX

    舞台演出家の夫と、女優の妻。ともに四十代くらいに見える夫婦の別れ話を描く。
    まずは夫が二人はなぜ別れるべきか、相手の短所をあげつらいながら延々50分ほどにわたって妻に説くのだが、己の繰り出すレトリックに酔い痴れているかのような夫の長口舌は独りよがりで退屈きわまりなく、寝落ちせず観続けるのにどれだけ苦労が要ったことか。
    が、合唱隊のくだりをはさんで妻が攻勢に転じると、劇は俄然面白くなる。それまで一言も発することなく夫の言い分を聞いていた妻は、夫の話を「観念的」と断じ、ついさっきの長口舌から観念的で空疎なフレーズを引用して夫を嘲り、客席をわかせる。
    しかし、二人が愛し合っていた頃の思い出話を始めると客席から笑いは消え、幸せだった過去をしんみりと語る妻の話に観衆は没頭。
    そのうち妻は「バラの刺繍入りの椅子は俺のものだ」などと物に執着する夫を蔑み始め、「私は●●●●を取っておく」と、忘れたくない思い出を列挙。このくだりこそが本作の見せ場。
    空港で拾った上記の椅子を手荷物として機内に持ち込み、膝に乗せて座る様を見て夫に惚れたという妻が、好きになったその時のことを思い出しつつ言うセリフ、「私は『あ、このひと好きだ。ヤバい』を取っておく」には胸が震えた。
    別れ話として展開してゆく恋愛論が、徐々に演劇論に重なってゆく二重構造も見事。

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    2016/12/29 03:10

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