満足度★★★★
予想通り感動に涙したが・・・
脚本家であり演出家でもある川口俊和が初めて書きベストセラーとなった『コーヒーが冷めないうちに』が再度舞台かされ上演されるというので観てきた。もともと舞台脚本として生まれたこの作品。脚本→小説と発展し、今回その小説を元に再び舞台化されたという訳だ。今回の公演では、全キャストがWキャストとなっており、自分の出かけたのはAチーム。メンバー表を詳しく見ず、日程だけでチケットを購入して出かけた今日。改めて会場で配役表を見たら、お気に入りの劇団の一つである東京アザラシ団のメンバーも2人参加していることを知ってちょっとビックリ。世の中狭いですなぁ。
さて、作品は過去・未来に行けるテーブル席のある小さな喫茶店フニクリフニクラでの4つの話。結婚を考えていた彼氏と別れた女の話『恋人』、記憶が消えていく男と看護師の話『夫婦』、家出した姉とよく食べる妹の話『姉妹』、この喫茶店で働く女の話『親子』の4話である。それぞれ、過去あるいは未来に行くことになる切ない過程や行った結果の感動的な結末。小説のウリは「4回泣ける」というものだが、舞台を観ていると、舞台で上演されている内容と読み終えた小説のシーンが重なり合い、4回どころかずっと涙目のまま。
まぁ、悲しさの深さは話が進むほど深くなり、涙も止まらなくなってくる。
ただ、そんなとき、ふと冷静な考えも頭の中をよぎる。今回の公演は小説全体を1時間40分にまとめたもので、当然ながら小説にあった気になるシーンや感動のシーンがカットされたり簡略化されたりしてた。自分的に、頭に残っていた小説とダブらせることで感動が深まったけれど、小説を読んでいない人だと舞台だけでどのくらい感動できるのだろうかという疑問。
もう一つは、小説から自分が作り上げていた登場人物のキャラクターと舞台におけるそれらのキャラクターに思いの外大きな落差があったこと。舞台演出は作家本人がやっているのだから、舞台でのキャラクターが本来の姿なのかもしれないが、例えば喫茶店のマスター・時田流、その妹・時田数、カーラーの女・平井八絵に少なからず違和感を覚えたのは確か。
話の内容が深いので、全体的に演技があっさりしていたことも気になった。
しかし、気になる点はあったものの泣けたことは確か。川口という男、人の泣く壺を押さえるのが美味い作家とみた。ちなみに、開演前の前説で本人が登場したが、本人に対する印象も予想を覆された。