あの雲の向こうは青空だった 公演情報 劇団FULL HOUSE「あの雲の向こうは青空だった」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    感情の盛り上がりが...
    本公演は、歌謡界を描いたものではなく、人を思いやるような、そんな心温まる物語である。話としては好いのだが、気になるところも…。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、上演前は着物が掛けられ華やかな歌謡界というイメージを作ろうとしている。その後は場面に応じて転換させる。主には歌手・川島さくら(加藤まゆ美サン)の自宅兼事務所内。上手側にサイドボード、その上にコーヒーメーカーが置いてある。客席側にミニ応接セット。下手側に事務机と椅子。母が歌手であることは、壁に貼ってあるポスター(「百花繚乱!じょっぱれ!チンパンジー」の曲名が印刷されているが、同曲は劇中挿入歌でもある)で分かる。

    梗概...冒頭、ストリートミュージシャン(氏家エイミーサン)の路上ライブを年配のアベックが聞いているところから始まる。場面は変わり先の音楽事務所、そして毎朝決まったような母と息子・勇気(中平成哉サン)、そして母のマネージャーが加わった会話。そんなある日、1人の青年・曽根崎哲(脇野星サン)が(事務所)応募チラシを持って訪ねて来た。それは何年も前のチラシ。そこから断片的な記憶を辿り、曽根崎と歌手・川島さくらの出会い、そんな邂逅するような話。物語に動く感情は、母と子の愛情、青年とその友人の思いと裏切り、そして彼女・吉田真知子(貴雅マリコサン)への切ない恋心が交錯する。

    母で歌手の さくらは、息子の運転する車で事故死しているが、息子のことが心配で現世をさまよっている。一方、曽根崎は仮死状態であるが恋人をめぐり友人を裏切ったとの罪の意識下にある。愛情・悔悟などの感情が透けて見えてくる。それらの感情が現世への未練となっている。それらを乗り越えないと(成仏)いけない...それがタイトル「あの雲の向こうは青空だった」になるのだろう。

    物語は面白いが、早い段階で母が亡くなっていることが分かってしまい魅力が半減し残念である。朝の会話で、母と息子、マネージャーの視線がわざとらしく外れる、動き(動線)が不自然であった。
    また、感情の高まりとしては、母の一方的な愛情、青年の彼女への愛しさは通じる。逆の息子は坦々とした態度、彼女は秘めた(抑えた)感情で、当事者同士の感情の盛り上がりに差があるように思う。いや確かに思いやる心があったことは描いているが、そのシーンが短(少な)い。互いの高まった感情の交差が大きな感動をよぶと思う。観客(自分)は、その感情の差を醒めたように観ていたようで感情移入が...、その意味で勿体無い公演に思った。ラストはプロローグに対するエピローグを観せるが、少し余韻付けがくどいような。

    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2016/12/12 18:38

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大