MOLOK 公演情報 劇団メリケンギョウル「MOLOK」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    骨太作品が…
    この公演は、史実に基づく「マクベス」と、旧約聖書にある神話・悪魔的なモロクの物語を綯い交ぜにしたもの。劇団の謳い文句である“忠実×虚構“のハイブリッド新生「マクベス」...その脚本は骨太で面白い。

    しかし、脚本の力・面白さを演出・演技が削いだようで勿体ない。もしくは脚本の力に演出・演技が追いつかないといった感じで惜しい。
    本公演は「マクベス」をベースにしているが、シェイクスピア版における暴君ではなく、どちらかと言えば名君のような描き方である。その試みは良かったが...。

    (上演時間:前説では1時間45分、実際は2時間強)


    ネタバレBOX

    勇猛果敢な将軍マクベス(本公演ではマクベタッド)は、妻(グロウク)に唆されて主君を 暗殺し王位に就くが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱していく...というのがマクベス。
    一方モロクは、古代の中東で崇拝された男神の名で、元来は「王」の意だという。「涙の国の君主」、「母親の 涙と子供達の血に塗れた魔王」とも呼ばれており、人身供犠が行われたことで知られると。王の初男子が炉にくべられ、王家が代々繁栄するという。

    本公演で登場するマクベタッド(弟はバンクォ)は双子という設定で、魔女に当たる予言師・レギオンが囁く。そして原作通り前王を殺すが、実は前王(女王・ドナハ)の実息子の仕業である。この実子が無能であり、王位を継承させたくないとの思いが悲劇を招く。
    名君マクベタッドは、ドナハの願いとは言え、自分が王位に就いたことを悔いている。眠れなくなり酒に溺れる。その苦悩がしっかり伝わる。人は聖人でもあり狂人にもなる。その心の持ちよう...人間が矛盾を抱えているということを表すため、シェイクスピアはオクシモロン(撞着語法)という手法を用いているが、この芝居でも「きれいは汚い、汚いはきれい」と...。しっかりと面白いところは引用している。
    この芝居では、マクベタッド(弟はバンクォ)は移民という設定。その受入れ取り立ててくれた恩・義と偽・贋の狭間での生き苦しさ。その心情をモロクに出てくる王の初男子が炉へ、という犠牲の場面がマクベス物語にしっかり組み込まれている。その“忠実×虚構“の物語は観(魅)せてくれた。

    脚本は重厚であるが、演出は多くの箇所で笑いネタを入れ軽量にしてしまった。演技は役者間での力量差が大きくバランスが良くない。できれば笑いネタは控え、全編通して骨太作品として仕上げてほしかった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/10/17 22:04

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