際の人 公演情報 文月堂「際の人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    こういう語り口だからこそ描きうる凡庸さ
    気負わずに観ることができて、素敵にラフな物語の展開や踏み出しもあって、ドキッとするような色香も差し入れられて・・・。
    でも、そうして描き出されるものが、やがてフォーカスを定め、ステレオタイプにならず、しっかりと、実存感をもって、ある意味凡庸な登場人物の生きる感覚を浮かび上がらせることに惹かれる。

    こういう、どこかコミカルで、遊び心をもち、ちょっと緩めななかに、キャラクターが抱くものがぶれずにクオリティをもって、削ぎ出されていくのは、実はとてもしたたかだとおもう。

    こういう語り口でなければクリアに描きえないであろう凡庸さの肌触りを、あっと驚くリアリティとともに受け取り、素敵に得心させられてしまいました。

    ネタバレBOX

    冒頭に編まれる「有言不実行」のありようが物語の基礎になっていて、いくつかのエピソードがそことの重なりや対比となって歩むことで、終盤には描かれるキャラクターの肌触りが死んでも変わらないみたいな感じとともに、とてもビビッドに浮かび上がってきました。

    それは、多分正攻法で役者がひとりで描こうとしてもなかなか表現しえない感覚なのだとおもう・。
    さまざまな貫きを持った人物たちや主人公と同じ匂いをもつ女性を配したその先だからこそ、初めて観る側が感じうるものであった気がします。

    斬新さはなく、ちょっと古風な手作り感満載のお芝居なのですが、その世界から歩みだしてくるものが、やがて息をのむほどにしなやかな実存感として残る。

    こういう作り手の表現力は、地味ではあっても、じつはなかなかに巡り合えないものだし、貴重だと感じました。

    ちなみに初日の観劇でしたが、回を重ねるにしたがって、この凡庸さの実存感は更に際立っていくような予感もありました。

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    2016/10/05 11:38

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