三人姉妹vol.1 公演情報 テラ・アーツ・ファクトリー「三人姉妹vol.1」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    生きる痛み
    愛を捨てた長女、愛を求める次女、愛を諦めた三女...戦争という最悪な不条理を経てもなお痛みを伴う世界。それでも慈しみを肯定して生きる、しかしその生きる痛みから滲み出る膿のような諦念、絶望が伝わるが...。

    (上演時間1時間10分)

    ネタバレBOX

    舞台はほぼ素舞台、上手客席側にストーリーテラー的な役者が座る椅子・テーブルのみ置く。黒を基調にした色彩は守旧のイメージ、効果的な音響が閉塞感を漂わせるようで、間然する所のない舞台のように思えたが...。

    舞台全体は抒情的。脚本の故・岸田理生の世界...その詩的な表現をダンスという身体的表現で特徴付けているような公演。それは心象を意識したものであろう。音響は、時計の秒針を刻む音、汽車の走る音、波と海鳥の鳴声など場面を印象付ける。

    戦後、疎開先の家にいる三姉妹。その性格や異性関係などを通して人間の不条理をみる。長女は守旧という立場を貫き、妹達を手元から飛び立たせない。いい子を演じ、自分の考えに固執する。次女は出征した恋人(影)の復員を信じ、東京へ行きたいと。三女は恋人を長女に見殺しにされた屈折した思いから精神的な病へ。
    戦争が終結しても時間が止まったままで、新しい人生が歩めない姉妹。それはこの時代の多くの人が味わった感覚かもしれない。物語はフラッパーであり長女自身が、自らを見つめる形で展開していく。そして長女の人生を顧み、将来を見る...その暗示的な台詞は、右手に過去、しかし左手の将来は何も見えない。
    この大きな時代の変化の中で、これからどう生きていくのかを探る、それを濃密な会話で描き出すだけでよかったと思う。

    本公演では、あえて現代、といってもバブル最盛期の東京を描き出す。それを不規則に動く人々(役名)4名で表現している。忙しく、それでいて交わらない人々、そしてディスコミュージックが流れ、合コンという流行(はやり)行為。
    しかし、この戦後とバブル期の享楽的な状況の対比は、脚本を陳腐なものにしたように思う。このシーンを描くのであれば、長女と次女、長女と三女だけでなく、次女と三女の関係をもう少し描いてほしかった。

    先にも書いたが、身体的表現など独創性があるだけに、勿体無い公演に思えた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2016/10/02 13:20

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