冒険王 公演情報 青年団「冒険王」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    モラトリアムはうらやましいけど(たぶん)終わりがある
    芝居が進むにつれて、一人ひとりが魅力的に見えてきて、
    そんな彼ら中にいたいと思わせる。
    こんな感じならば、旅をするのも悪くない。
    悪くないどころか、とってもうらやましい。

    彼らへのうらやましさは、モラトリアムのうらやましさだ。
    旅というある種の「言い訳」の中で楽しくモラトリアムな時間を過ごす人たち。
    観ていて、「ああ、若いときに旅に出ればよかった」と思った。
    ま、言い訳があってもなくても、どこにいても
    同じと言えば同じなのだが。

    同時多発的に交わされる会話の中にいると、
    まるで同じ安宿のこちら側に座っているような感覚が襲う。
    それは、入口に立ち挨拶する人に、
    うっかりしていると「行ってらっしゃい」と
    声を掛けそうになるぐらいの感覚だ。

    ネタバレBOX

    安宿に集まる人たちは、若くて楽しげ。
    しかし、かつての仲間が婚約者と現れたり、
    仲間の妻が現れたり、という現実がジワジワとやって来て、
    旅の中で忘れてきたつもりの、日本に置いてきたはずの
    現実がイスタンブールのこの場所まで追いかけてきて、
    自覚のある者の背中をヒリヒリとさせている。

    それは、イスタンブールにいなくても、
    ある時期に自分も感じていたヒリヒリ感。
    「後がない」という感覚。

    ラストの唐突の旅立ちは、
    そこからさらに逃れたいという願望ではないだろうか。
    しかし、どこに行っても
    彼をどこまでも現実は追いかけていくのだ。

    蛇足的に少し残念だったのは、
    最後に訪れるカップルはかなり汗をかいていたのだが、
    そのほかの人たちに、気温を感じなっかったことだ。

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    2008/12/08 15:53

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