エルドラドを探して 公演情報 劇団 白の鸚鵡「エルドラドを探して」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    熱演伝わる
    シアターグリーン学生芸術祭Vol.10 招致公演、2016道頓堀学生演劇祭Vol.9最優秀劇団賞受賞作品...役者は熱演であった。

    「いじめ」問題の描きから「アイデンティティ危機」というテーマへすり替わるような錯覚に陥る。しかし「エルドラド」という地を背景にしていることは容易に想像でき、その支配と服従という構図...それを現代の病「いじめ」におけるいじめる側といじめられる側に見立てているようにも思える。分かりやすいテーマであり、その観せ方は理解しやすいよう工夫している。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    二重の紗幕を使い、人影で子供・金田武(河波哲平サン)の誕生を喜ぶ様子。幕を引き返し、姉との二人暮らしの現在シーン。その舞台セットは、二枚目の紗幕でうしろが見えない。中央にクローゼットが置かれている。そのドアノブを回し扉を開けると「エルドラド」という時空を超えた世界が現れる。多重による舞台空間を作り出すことで、物語の時間軸が分かるように工夫している。また紗幕情景には、スペインの沈まない太陽をイメージする絵柄がある。この演出は丁寧で観客(自分)の気を逸らさない。

    この「エルドラド」(黄金_伝説らしい)のシーンを中心に見た時、征服者たちは先住民(セリフでは「インディアン」と呼んでいた)の文明・文化を破壊し自分たちの”それ”を押し付ける。芝居の単純図式した描き方は、非道・残虐で、ここでも先住民対征服者を善悪、正邪のように観せる。この力の差は、科学技術としての武器の威力。武器の前では、人間の勇気や知性は無力化するのかもしれない。歴史認識の検証は必要であろうが、植民地化は繰り返し行われたというのが事実。

    一方の図式、「いじめ」も暴(腕)力の差であろうか。こちらも「いじめ」の連鎖が描かれる。いじめに加担しなければ、自分がいじめられる。また止めさせるなどの行為はしない。いじめに対する最大の自己防衛...観て見ぬふりへの批判も垣間見える。いじめの繰り返しは許されないと...。
    この「植民地=黄金強奪」と「いじめ=加虐満足」を同一線上に描いているような気がしたが...。

    演技は熱演...厭になるほどの嫌悪感、日和見という狡さがしっかり観てとれる。そして主人公・武の不甲斐なさ。そのネガティブな印象にも関わらず、”エネルギッシュ”という魅力を感じてしまう。一人ひとりの黄金郷を探すためにドアノブに手を添える。ラスト、役者それぞれがドアノブをテーブルに置き、それを照明で輝かせる、という印象付も良かった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/08/25 18:03

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