フローズン・ビーチ 公演情報 別れの始まり「フローズン・ビーチ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    面白い!...今後が楽しみ
    当日パンフの はしがき...「会うは別れの始めということわざのように、別れが来るまでの時間を、作品を通して大切に出来るように願いまして上演いたします」と。この「別れのはじまり」という演劇ユニットは、橋本ゆりかサンが上演の都度キャストを募ると聞いている。

    本公演は、その呼び掛けに応じて女優4名が集まり少し変わった物語を...。この脚本は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏によるもので1998年に初演。第43回(1999年度)岸田國士戯曲賞受賞作である。一場三幕で世相が垣間見える面白さ。

    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    1987年、カリブ海と大西洋のあいだにある島に建てられた別荘の、3階にあるリビングが舞台になる。そのセットは、スタジオ空洞という比較的狭いスペースをうまく利用し作り込んでいた。中央にテーブルとソファー、上手側にベランダ、下手側にカーテン付寝室、それに電話台、オーディオセットが配置されている。

    登場人物は、この別荘の持ち主(梅蔵)の娘・愛と双子の姉の萌(2役:山丸りなサン)、義母の咲恵(佐々木美奈サン)、愛の幼馴染の千津(橋本ゆりかサン)、その友人の市子(今城文恵サン)が繰り広げるサスペンスコメディー。

    物語は先に記したように一場三幕であり、時代は1987年、1995年、2003年と8年間隔で描かれる。そこにしっかり世相を反映させている。冒頭は千津の国際電話の長話。バブル全盛期の好景気感が溢れている。この別荘も海外進出の拠点のようなものである。
    時代は下り、1995年はバブルもはじけ、阪神淡路大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件という暗いニュースが続いた。それを反映して、この別荘の持ち主である梅蔵(登場しない)の会社も倒産し、別荘も手放すことに...。
    さらに8年後、この公演では現在になるが、島が海水で侵り出している。この件、南太平洋のエリス諸島のツバルという島をイメージしてしまう。失う(水没)前の観光旅行での賑わい。環境保護・資源保全が垣間見えるシーンでもある。

    この世相の移ろいに女性たちの人生(16年間)を重ね合わせ、それぞれの人間関係や個々人の心境、心情変化を繊細に描く。落死・毒殺・刺殺等の殺人未遂、千津と愛は同性愛という設定、エキセントリックな市子の行為・行動など刺激的な見せ場も多い。

    一幕、二幕はサイコ・サスペンス風であったが、だんだんと普通の会話劇に変容していく。結婚・出産・離婚などを経験した30歳代の等身大の女性の姿が見えてくる。
    キャストは登場人物の性格付、立場をしっかり体現しており、バランスも良い。脚本はもちろん演出も上手いと思うが、自分の好みとしては、時の経過にテロップというのはあっさりし過ぎで味気ない。出来れば状況や台詞で移ろいを感じさせる工夫をしてほしかった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/08/14 11:10

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