うちの犬はサイコロを振るのをやめた 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「うちの犬はサイコロを振るのをやめた」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    やっぱりすごい芝居
    やっぱりすごい芝居だと思う。
    再演で話の筋は判っているのに、同じように衝撃を受ける。
    このアイデア、構成、ナンセンスと批判精神、そして被り物の存在感。
    増田赤カブトさんの成長と、顔が小さくすっきりしたことに改めて感動する。
    相変わらず誰だかわからないぬいぐるみが似合いすぎる加藤慎吾さん、
    この芝居のシリアスな重みを一身に背負う横尾下下さんの凄み、
    シンプルな舞台でスピーディーな場転と効果的な映像の使い方、
    効果音のタイミングの良さ、キャバレーのダンスのレベルアップなど
    「ん・・・?」と思うところをチャラにしてしまうパワーとドラマ性がある。
    役者さんは大変だろうに、客入れの時間までエンタメに徹するところが好き。

    ネタバレBOX

    まだ大陸に満州国があった頃のこと、何でもありの中国にはしゃべる犬がいた…。
    その犬ゴルバチョフは、旧日本軍の手術によって「未来を見通す能力」を植え付けられる。
    この能力のせいで彼の人生は大きく変わり、ついには大きな決断をすることになる。
    未来を見てしまった彼が最後に変えたかったのは、一人の少女の運命だった・・・。

    「ちょっと、しょう油取って」という犬の第一声がいいんだな。
    ニワトリやトカゲ、マッサージチェアがフツーにしゃべって人間と仕事したりする、
    この“既成概念を強制的に取っ払う設定”がいい。
    世界観が広がってその後の展開は超自由、人間って奴のダメっぷりが際立つ。

    いつもながら笑っているうちに怖ろしい事実が明かされ、
    ゴルバチョフの苦悩が浮き彫りになる。
    幸福な生活がすべて頭の中の世界だったということ、その世界を変えるべく
    身を挺してシヅ子を守ることを決める決断。
    加藤慎吾さんの台詞は、軽さと重さのバランスが絶妙。
    それまで一度も吠えなかった彼が、ラストシーンで一度だけ長く吠える。
    その切なさ全開の演出が秀逸。

    CR岡本物語さんの芸達者ぶりも素晴らしい。
    グレーのカツラが素敵すぎ!(いつもこれでいいんじゃね?ってくらいです)
    野口オリジナルさんが惜しげもなく晒す(ほぼ)裸体の美しさ、
    ためらいのなさが潔く清々しいので台詞に説得力が増す。

    客入れの時のパフォーマンスも(人馬一体のアレも好きですが)力が入っており、
    ショートストーリーとしての完成度高し。
    いい気になったミッキーマウスがUSJに引き抜かれるという話だが
    ブラックな結末など吹原さんらしくて強烈な印象を残す。

    吹原さんの作品は荒唐無稽でふざけているが、それはすべて
    人間の黒い部分を描くため、その対極に置かれるものだ。
    被り物は、手段であって目的ではない。
    それがここまで鮮やかな劇団を私はほかに知らない。
    だから脱いでもすごいんです。
    次はR18に行くぞ。




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    2016/07/29 01:09

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