膨らむ魚 公演情報 劇団 バター猫のパラドックス「膨らむ魚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    シュールな...
    人間の内面・感情を描いているが、その描き方が逆説的である。描き方がより人間の厭らしい面をクローズアップさせる。その効果的な観せ方が実にシュールで印象深い(不快)ものになっているが、それだけ上手いということ。
    当日パンフレットに、”狂気が、溢れ出す。”とあるが、その「感情」は、「無感情」という正反対によって浮き彫りになるが、人間の光と影という二面性を観るようであった。
    ちなみに当日パンフレットは、役名が書かれていないため感想が書きにくいのだが...。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、ほぼ素舞台。舞台下手側に黒BOX2つ。正面は張り壁のようで、顔写真を撮るような感じて一部が刳り貫き窓引戸がある。

    この公演で印象的なのが、終盤の心情吐露シーンである。長い暗転...大川興業の暗闇演劇「The Light of Darkness」の公演パンフが挟み込まれていたが、この暗闇劇は2回観たことがあるが、全編暗闇である。その意味で最初から全神経を各所に集中させているが、本公演ではワンシーンのみその手法を用いても、集中力を保つことは難しい。

    梗概...兄・妹・弟の三兄弟が、幼い頃近所にある塔に登ろうとし、弟(6歳)は落ち意識不明になった。6年後に意識は回復したが、その間の成長が止まっている。近所の人に揶揄され、その腹いせに放火をしたが、その結果、放火先の生活を崩壊(母は焼死)させた。弟の身代わりに姉が10年間刑に服した。兄は家出したまま、妹・弟を見捨てたようだ。
    一方、被害者家族には子(姉妹)があり、妹はアイドル目指して活動中。この姉妹を兄は偽名を使い支援している(償いの気持)。その正体がばれて被害者・加害者の痛みと悲しみの連鎖が、終盤迫力を持って描かれる。

    また、サイドストーリーとして、弟は詐欺まがい似非宗教法人の教祖に救われ、教団で活動している。この教団を強請るジャーナリスト(娘が難病で金が必要)とのエゴのぶつかり合い。更にアイドルの追っかけが不気味な存在。

    メインストーリーにサイドストーリーが複層的に絡み、人間の内面を炙り出す。その源になるのが、心を持たない少女。幼い時に親に捨てられ心を操れない。その無の思いが他人の心内にずかずかと入り込んで、一見単純・素朴な言葉が相手を傷つける。この無を表現する演技として、手足を直線的に大きく動かす。軍行進のような感じであるが、その仕草はロボットのイメージであろうか。この、ゆきぽよ(木村有希)サンの演技は妖しくもコケティシュで良かった。
    総じて役者陣の演技は安定しており、バランスも良かった。それぞれの役柄の人物像を立ち上げ、その心情表現も上手い。

    暗闇シーンは、心情を吐露する台詞のみで、暗転時間はもう少し短くても良かったのではないか。繰り返し発せられる「想像する」は、この暗闇シーンでは心情を浮かばせるまでにはならなかった。また終盤の狂気(凶器)シーンは、照明の点滅を利用した迫真効果を出すなど、もう少し盛り上げがあれば一層観応えがあったと思う。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/07/16 18:51

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