満足度★★★★★
東京の、地域演劇を思う
最近観た、青森の劇団、弘前劇場の舞台「いつか見る青い空」が、頭から離れない。はっきりとしたスジのない、津軽の日常を淡々と描く、同時多発会話劇だ。洗練されているとは言いがたく、むしろ、泥臭いその舞台では、生身の役者の人生が、生き生きと、はっきりとした輪郭をもって迫ってきて、僕は、圧倒された。
青年団の、12年前の作品の再々演である今作は、目的なく世界をぶらぶらする、日本人旅行者たちのたまり場となっている、イスタンブールの安宿が舞台。総勢18人の旅行者たちの日常を、複雑な同時多発会話によって、淡々と描く作品。
これを観て、僕は、完璧な作品だ、と感じた。本当に面白かった。見方によっては重いテーマを、受け止め易いものにしている、全編にちりばめられたユーモアのセンス。複雑な会話を、とても分かり易く伝える、巧みな構成。しっかりと訓練されて、自らの役を、過不足無く演じる役者たち。どれをとっても、完璧で、洗練されつくしている。
そして、僕は、弘前劇場を、また思い出すのである。両者が、とても似ているのに、全く、正反対のものとして、映る。そしてそのとき、青年団の舞台が、とても、東京的なものとして、みえてくるのだった。すこし、そのことを、考えてみようと、思った。