満足度★★★
脚本・役者に粗さはあったが着想が面白い
30日午後、下北沢のGeki地下Livertyで上演されたu-you.company 16th STAGE 稲森美優presents『MASTER IDOL』の公演を観てきた。この劇団はアフリカ座系列の一つで、杉山夕が率いている。
さて、あらすじはというと・・・・・
アイドルである柊透子は精神的な病で入院中。どういう病かというと、正式な病名はあるのだが、分かりやすく言えば多重人格障害。つまり、透子の頭のなかには14人の人格があって、時々その中の人格が透子の精神を乗っ取って行動するというもの。時には、透子とそれらの人格は頭のなかで交流を持つことも。そもそも何故そういう病気になったかというと、本当はアイドルにはなりたくなかったのに人生の流れでアイドルになって活動するようになったことへの悩みの持って行きどころがなかったから。
透子と女性医師、透子と頭のなかの人格たち、そしてその人格立ち同士の交流の中で、透子は自分の本当の気持、つまりアイドルを辞めるという自分の心に一番素直な結論を導き出し、頭のなかにあった人格たちを消し去り病から立ち直る。
医師や頭のなかの人格たちとのやり取り、そしてその人格同士のやり取りの中に笑いありしんみり有りの面白い舞台。ヒロインは透子であるが、出番の多いのは透子と一番多い接触をする人格・沙月(稲盛美優)。個々の女優の持つ個性を生かした舞台で味わいはあるのだが、問題は結末。透子はアイドルをやめると決心したのにも関わらず、ラストシーンはアイドルとなってファンの前に復帰し、登場人物全員がダンサーになって繰り広げられるライブステージ。あれれ、どうなっているのかな。舞台終結の盛り上がりとしては流れ的に良いのかもしれないが、ストーリー的に破錠しているような・・・・。
人格たちは、日常生活、アイドル生活、理性、本性という4つのグループに分かれてお互いが緩衝しあうという発想は脚本として成功ではあるが、細かな点で粗さが目立つ。まぁ、演じるのがアイドル的女優陣のみであるところに限界があるのかもしれない。
この劇場を使う団体の演出を観て毎回思うのだが、客席入り口上のシャッター内も舞台の一部として使える空間であり、これをなぜ活用しないのだろうか。特にこの団体は舞台上の大道具が壁の組み合わせのみで構成されているので、舞台転換には入れ替わった時の女優の第一声がけっこう重要なポイントになるのだが、それが成功していたかどうかは評価が難しい。
中山浩が演出を担当しているのだが、ちょっと演出方法がマンネリ化してきたように思う。マイナー的でもよいので、何かテコ入れが必要ではないだろうか。
当日、受け付け・場内整理には、同じアフリカ座系列の別団体のメンバーも参加していた。