ビッグマウス症候群 公演情報 劇団フルタ丸「ビッグマウス症候群」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    復活した生き様
    ビックマウス症候群....出来ないことを、さも出来るように大口をたたく、いわば虚言癖を指すそうだ。この物語は、ビックリハウスのような構造ならぬ構成の錯覚と変容が面白い。
    他人の人生を自分の手中にし、運命を握るようなブラックな…そんな怖さも垣間見えたりして観応え十分。大きな運命が個人の人生を決定付けるか、逆に個人が運命を変え拓くか、そんな視点で観ると隔靴掻痒のおかしみが…。
    そして地方(岐阜)公演へ拡散していくという。(上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    セットは、段差のある舞台、上手・下手に1~2人が立てる同じようなスペースを設け中央は、舞台側の凹んだ空間を作っている。中央段上に机でもあれば法廷をイメージする。正面上部の壁には寄せ木細工のような模様が張り合わせてあり、風車もいくつか...。

    登場人物は6人なので、その人物紹介と造形は丁寧に説明される。うち、1人は精神科女医で、この街(かざみ町)で生まれ育っている。この女医が、ビックマウス症候群と診断し薬を処方している。その患者が、通院している間に仲良くなり、そこに自分はビックマウス症候群ではない。この薬には何らかの意図があることを疑い始める。この登場人物、特に際だった特徴がある訳ではなく、適当に当てがわれた職業だと思っていたが、それが後々 寄せ木細工のピースをはめるように見事な結実へ。その脚本もさることながら、構成・演出は素晴らしい。

    まず診断する病室は、先に記したスペースに丸椅子1つ。上手・下手の距離を置き対面して症状を問う口調は、すでに怪しげである。女医は上手・下手を交互に行き来して診察室・患者の立ち位置を変える。この動作を通じて定点化やテンポ感の減速を防ぐ。観客は演技を見るため、自然に視線を動かすことになり、一人ひとりの患者に相対している状況を見せる。

    中盤以降、この状況に変化が生じる。東京から出張を命ぜられた男が、この薬によりやる気、高揚感が減退させられていることに気がつく。そして町の合併問題が明るみに出る。現職町長はこの何期も対立候補がなく無風の選挙になっていた。この町長の娘が女医。ここに至って女医の目的が分かる。
    無気力と化していた男が対立候補として出馬した。その応援に、ビックマウス症候群と診断された仲間が立ち上がる。今一度、生きがいを見つけるために、故郷のために立ち上げる再生ドラマ。

    役者の演技は見事...特に選挙演説を通じて現代日本への問題提起。この芝居では町合併の是非を問うことを争点にした展開である。合併しても直ぐその生活状況に変化はない、しかし町名がなくなることは記憶から消え去る、故郷が遠い存在へ追いやられるような感じ。具体的な政策論争を説明することはないが、町の閉塞状況への危機感を訴える。この明確な論旨が町民(18歳以上への選挙権も絡め)の支持を受ける。無風に風が立ち、まさしくこの町の名物...風が吹いた。
    そしてこの選挙で町民が下した結果(審判)は...。ラストシーン、診療室での会話は余韻そのもの。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/05/28 09:13

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