パピヨン 公演情報 パピヨンパピヨン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    もう少し重厚さがあれば素晴らしい
    孤島にある刑務所監獄内が舞台。新宿眼科画廊という小空間はその演出にピッタリである。タイトル…パピヨンはこの芝居を象徴する。さて、同じように「パピヨン」(1974年 日本公開)という映画があったが、その内容は異なる。この監獄内で交わされる会話は、自制または内省するような感じである。

    この公演(監獄内)の入場券は番号(自分は1144)が記載されたシールであり、役者が着ている囚人服にも同じ桁の番号が縫い付けられている。もちろん観客も囚人となり俯瞰していることになる。挟み客席で、舞台中央にテーブル、椅子が置かれている。床にはジクソーパズルのピースが散乱している。灰色の汚れた壁、その一角に鉄格子の窓。全体的にモノトーンな照明。時折、窓照明の明暗で時間経過が分かる。音響は始終波の音と海鳥の泣き声が...。それら全体が孤島の雰囲気を表している。効果音以外は独り言、会話(他者を寄せ付けないような毒(独)舌)である。

    この公演は、限られた人間関係に中に大きな世界観と心魂が表現されていたようだ。

    ネタバレBOX

    基本の登場人物は3人(女2人、男1人)...うち2人(男・女)は死刑囚である。女囚(2310号)は革命家で、国家反逆ということらしい。男囚(1620号)は殺人鬼という。そして唯一囚人でないのが、18歳の少女である。少女の母親が凶悪犯で収監後、彼女を産んで直ぐ亡くなった。その凶悪犯の娘ということで引き取り先がなく、この刑務所で暮らしている。この設定に疑問が無い訳ではないが、彼女の外界(世間)を知らない問いかけが会話の重要な部分を占める。

    多くは革命家の女囚と少女の会話。女囚・活動家は、国家との対峙によって形成された自己と、その意思の貫徹(国家があるから自由がない、自由を欲っすれば国家の滅亡へ)が人生そのものである。その結果、世に背を向け人を信用せず、また寄せ付けず、あくまで自分の世界に身を置く。「人」という漢字は、お互いに背を向けているが、その関係は支えあっているように見えるのだが…。

    一方、少女は世間を知らないゆえの純真な心を持っているようだ。この環境でどのようにしてその人格形成が出来たか疑問であるが、いづれにしても女囚とのやり取りが人間の心根を炙り出すようであった。人の別れ(刑執行)に対する感情の高ぶり、冷徹な態度の女囚に対する訝りがしっかり描かれる。実に普通の人間感覚である。そしてついに女囚の刑執行が...。

    この物語は囚人の刑執行に伴い、最終的には少女一人になる。その孤独に対する救いのようなものが、「パピヨン」である。鉄格子から蛹(さなぎ)が見えるが、それが孵化して蝶(アサギマダラ)になる。この蝶は飛翔距離が長く、この孤島から大陸まで飛ぶことができるのでは、そんな希望を感じさせる。もちろん、その蝶の意味するところは言わずもがな。

    脚本は面白い。演出は大きな特徴がある訳ではないが、逆に何もない監獄内を描き出すのは難しい。そして3人の役者の演技が良く、特に女囚役(いいぐち みほサン)の演技は圧巻であった。

    最後に、ラストの暗転後のシーンは追憶か回想したのだろうか。それは絶望の淵に落とし込まないことか、その意味するところが判然としない。
    監獄内だけに緊張感と嫌悪感のような重厚な雰囲気が醸し出せたら、もう少し環境・状況に共感できたと思う。その点が普通の小空間での会話劇の域を出ていないような気がして勿体無かった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/04/18 05:57

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