タルタロスの契り 公演情報 劇団俳小「タルタロスの契り」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    丁寧な作りと確かな演技
    北海道新幹線が3月26日に新函館北斗駅まで開通した。この公演では「碧血の碑」の前で、アイヌ人(フクロウ)と内地人(ラバ)がタルタロス(奈落)...勝負からおりないことを誓う。それが70年ほど前の話であるが、今後は陸(鉄道)と空(飛行機)の競争となる。また新聞記事に、この地に漫画「北斗の拳」の主人公・ケンシロウの銅像が建ったとあったが、戦いはマンガの中で...。時代、隔世の感といったところ。

    ネタバレBOX

    公演は、戦後間もない頃(1947年)から大阪万博前年(1969年)までの北海道函館の雀荘兼売春宿(死語?)の「五稜邸」が舞台になっている。アイヌと内地人の争い、しかし第二次世界大戦の前では、いつの間にか同胞的に戦地に行かされ、死地をさまようことになる。その後、終戦になり生きる気力を失う男たち。一方、色々な事情があるにしても逞しく生きている女たち、その対比も垣間見える。

    この函館という寒地を背景に、奈落という深淵に魅せられた(勝負)男たちの戦い(賭け)が熱く語られる。しかし、自分は、「碧血の碑」やイコン画の「山下りん」の名前などが出てくるが、この物語における関係性(土方歳三の血筋の話はあった)が判然としなかった。主題はそちらにあるのか、物語の背景を表現しただけのものか。

    舞台セットは、中央に雀卓、上手に”だるま”ストーブ、下手にミニカウンターが置かれている。そのつくりは重厚感があり、物語の見せ所である勝負シーンの緊迫感と相まっていた。時代という大きなうねりの中で虚無的になっている男たち、しかし目先の卓は、遣る瀬ない心を奮い立たせる場でもある。生きがいとは何か、そこに命を懸ける値打ちがあれば、親兄弟まで犠牲にして金策に走る。

    一方、女衒の元締め、その悲しいまでの生い立ちが、同性をも食いものにする銭ゲバに成長し逞しさを見せる(「だるま」は俗語で売春婦を意味していたような)。

    戦後の混乱期における自我・自立の「虚無」と勝負・賭事への「情熱」というアンバランスな精神構造が当時の人間性を象徴するのか。全体的に丁寧な描きで演技も上手いが、その”勝負事(奈落)”という表層は見えるが、自分にはその現実感と切迫感が分からない。それゆえ感情移入という点においては、今一つという印象であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/03/28 06:43

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