『夜、さよなら』『夜が明けないまま、朝』『Kと真夜中のほとりで』 公演情報 マームとジプシー「『夜、さよなら』『夜が明けないまま、朝』『Kと真夜中のほとりで』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    再構築の妙
    藤田貴大が少し前、寺山修司の「書を捨てよ町へ出よう」を演出したとき、この作品のパーツも含めさまざまな断片を用意し、それをつなぎ合わせるスタイルで新たな戯曲を演出した。寺山の言葉をなぞるように、藤田は「演劇の実験」として「いろいろ試す姿勢を引き継いでいる」と言った。

    今回は「夜」「不在」をベースに三つの戯曲をつなぐだけでなく、おそらく個々の断片を再構築してつくりあげていったのだろう。繰り返されるせりふ、機敏でシャープな俳優たちの動き、そしてそれらの塊としてのリフレイン。劇場の奥行き、スポットや蛍光灯などの照明、スクリーンに映し出す映像。これらも断片として効果的に縫われていく。名作「cocoon」で見せたあの舞台芸術の原点は、ここにあるのではないかと想像する。

    俳優に個性が見えない、という批判も出るかもしれないが、藤田はおそらく、舞台上で俳優が個性を発揮するのではなく、均質でかつ機敏で正確な動きを要求している。それは俳優も再構築されるパーツだと言えるのかもしれないが、かといって無機質な冷たい舞台ではない。

    透明感のある、みずみずしい空気感がいい。客席の想像力を刺激し、さまざまな物語の続きを客に想像させる。

    ネタバレBOX

    蜷川幸雄の体調不良で延期となっている「蜷の綿-Nina's Cotton-」で使われる舞台の断片たちを展示したスペースを、今回の舞台の半券で無料で見られる。ここで断片立ちに向き合っていると、蜷の綿で藤田貴大がどうこれらを再構築していくのか、想像するだけで楽しい時間だ。

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    2016/02/27 22:04

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