鈍色の水槽 公演情報 ロデオ★座★ヘヴン「鈍色の水槽」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鈍色
    十七戦地の柳井さんが書く大胆な設定と、
    ロデオのお二人の繊細で息の合った芝居がグッドバランス。
    人の骨格を持つ人魚が打ち上げられるという、このあり得ない設定が
    次第にリアルな色合いを帯びて来るプロセスが素晴らしい。
    ファンタジーを面白くするのはいつも人間の“裏の顔”だが、
    人魚のそれが秀逸。
    映像が美しく巧みで、ファンタジーらしい雰囲気と妖しさを盛り上げる。


    ネタバレBOX

    光村海洋生物研究所は、三陸海岸沿いの港町の水族館跡地に建てられている。
    港では最近漁網が破られたりする被害が出ており、研究所も対策を迫られている。
    研究員たちが白イルカの仕業ではないかと考えて対策を練っていたところ、
    ある日その白イルカを捕獲したという知らせが入り、研究所は沸き立つ。
    水槽に入れられた白イルカを調べていくうちに不思議なことが起こる。
    ”人魚”と名付けられた白イルカが人間をコントロールするような出来事が続き
    やがてそれが30年前に起こった事件と奇妙な一致を見せ始める。
    町の誰もが口を閉ざす30年前の出来事とはいったい何なのか・・・?
    さらに、何かを知っているらしい館長の秘密は・・・?

    冒頭、研究員である天野司(澤口渉)が夢の中で
    イルカトレーナーの舞原(音野暁)と語り合ったあと、
    タイトルと出演者名が映像で流れるのが大変美しい。
    チラシの写真と同じイメージがゆらゆらと立ち上る映像は
    このストーリーの根幹を成すものだ。

    未知の海洋生物が人間の生活を脅かすというテーマは「花と魚」とも共通するが
    今回はそのかかわり方が全く違う。
    人魚には感情があり、人間を翻弄するしたたかさがある。
    明確な意図をもって陸に近づき、目的を遂げて戻って行く。
    その理由を知ると、この物語がラブストーリーであり喜劇であるとも思える。

    “登場人物”として白イルカ=人魚は、巧みな映像によって映し出されるだけなのに
    ある種の「人格」を持っていることが、このファンタジーの核になっている。
    そして驚愕の真実を聞かされた司が割とすんなりそれを受け容れるので
    観ている方も「まあ、本人がそれでいいならいいですけど」的に納得してしまう。
    こと人魚に関して納得させる所以は、澤口さんと音野さんの自然な感情表現である。
    ことさら熱弁を振るったり思い入れたっぷりなわけではない。
    ゆったりとしたテンポで、観ている私たちも彼らの心の動きについて行く。

    司の夢と現実の行き来が、重なったり同時進行したりという
    かなり自由な構成であることなどを考えると、
    けっこう強引な作りとも思えるのだが
    つまりみんなが信じてしまえばファンタジーは成立するということだ。
    「うっそだぁ~!んなわけないじゃん!」と言ったらおしまいなわけで。

    朝倉洋介さん演じる同僚研究員のキャラなどが魅力的なので
    温かなラストまで惹きつけられる作品。
    館長を演じた関根信一さん、いつもながら達者だが、
    火サスの愚かな母親みたいなキャラはあまり似合わない気がした。
    理性と緻密さで自己をコントロールできる女を演じると
    硬軟の加減が絶妙なんだな。









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    2016/02/13 02:41

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